前頭葉ありがとう
— トビーネット (@toby_net) March 1, 2022
前頭葉だけが異世界に転生してしまい取り残されたおっさん二人がふらふらする話
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「すべての人類はおっさんである」とするネット人間感を持っていたために、いまだネットで会う人すべておっさんだと思ってしまう
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前頭葉が異世界にとばされ2年が経過した。かろうじて命を拾った。リバビリも順調だ。ふと同じ病室になりちがちなおっさんと離すとどうやらおっさんも前頭葉が飛ばされたのだという
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その対角にいるおっさんとはイゼンにも話したことがある気がする。おっさんも前頭葉については、あとから聞かされたのだといいう。異世界について聞いてみたが、異世界そのものを知らないようだった
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「異世界」はまだ一般に普及した概念ではないのかもしれない。それともその意味がおっさんから失われてしまったのか。いずれにせよ、転生されたのは自分らではないのであるから、今となっては、どうでもよいことだ
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いつから話すようになったか覚えていないが、おっさんと旧知の知人のように会話するようになったのはたしかだ
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なぜ異世界に前頭葉が飛ばされたのか。そのような話題を当初はしたような気もするが、今を見るに、もうする必要はなさそうだ
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異世界に飛ばされた前頭葉がどうなったのか。それだけは、少し気になっている。魔法陣の中空に現れた「何か」の「片」がべチャリと床に落ちる様子がまぶたの裏に浮かんだ
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実際に前頭葉がどのような形で、質感で、大きさなのか。ましてや転生先で、どのような形に変異しているのか。知るよしもなく、知る必要もない気がした。
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おっさんは知らなかった。紅い棒状の「アーティファクト」、それも「無料ダウンロード」と描かれた「聖なる人工物」が異世界に現れていたことを
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たてまつられたおっさんの元前頭葉が、異世界の危機を救うことを知る必要はない。おそらく知る手段もない。
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おっさんはしばじは夢を見ていた。見慣れない世界に自分がいて、ひたすら押下されている。ジャバジャバ言う他なかった。夢であるからか、そうしなければならない気がした
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夢の中で、水辺など反射のある場所で自身の姿を見ることができた。それは紅く棒状、「今すぐダウンロード」と銘が彫られていた ーー
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『異世界ダウンロード』前頭葉大戦編より抜粋
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水平線の彼方まで水で満たされた風景の中、ぽつんと一つ前頭葉と思われる ーー そうとしか思えない ーー 物体が中に浮かんでいた。
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カメラが引くと、ガクブチが見え始めた。斜め向かいの作品ブースまでが画面に収まると、係員のような出で立ちで名札を下げた者が、スーツの男に何やら説明をしている
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