VR、ジャバボタンが目の前に

「『VRでジャバボタンが目の前に』と聞いて来た。」
「… こちらへどうぞ」

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

「…」
「上着をお預かりしましょう。」
「いや、いい。それよりもジャバボタン(以下、ジャバボ)はどこに?」
「準備させてございます。いましばらくお待ちを。」

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

「ええい、まだか! VRジャバボとやらが一向に姿を見せぬではないか!」
「… 大変おまたせ致しました。こちらへどうぞ」

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

「きさま、当方をあざむいたならば、どうなるか分かっておるであろうな。」
「… まずはこちらの被り物をお召ください」

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

「こ、これは、殿下のカブト! 一体どこで…」
「グフフフ… 」
「まあよい。これをかぶればよいのだな。」
「……」

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「ウッ! これは…」

人間がカブトをかぶり、顔をあげると、先程までは無かった台座があり、そして紅いジャバボが鎮座していた。

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「何ということだ。これがジャバボだというのか。」
「旦那さま、いかがでしょう。」
「…こんな、まさか、こんな…」

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カブトを被ったままの人間は、先程あらわれたジャバボの表面をひとしきり撫で回した。

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「その、これは、押下してもよいのか?」
「…ご自由に」

"自由" という言葉は、カブトの者に涼しさを感じさせた。

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(ジャバッ!)

押下した途端、いかつい音声が流れだした。カブトの者が鳴らした「ゴクリ」という喉の音は、ガランとした部屋に響いた。

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カブトはジャバボを握ったまま、従業員の顔をちらりと見た。コクリと頷く従業員。言葉は要らなかった。

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クリック音(カチカチカチカチカチ)
音声(あな、あな、あな、あな、あな…)
音声(あなたとジャバ)

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

クリック音(カチカチカチ……)
音声(いまいまいまいま…)
音声(今すぐダウンロード)

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

クリック音(カチ カチ)
音声(あなたとジャバ、今すぐダウンロード)

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

たった数分の余韻が何秒に感じられたものだろうか。カブトは目を閉じたまま、鳴らしたのちにニンマリと微笑んだ。

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「いかほどだ!」
「へ?」
「このカブトはいかほど出せば手に入る!」

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

従業員はニタリとしたり顔。
「いかほどど聞いている!」
「…お代はいただけません」
「5億デバイス、いや30億デバイスではどうだ!」
「…」

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したり顔のまま従業員は話し続けた。
「そのカブトは殿下のものでして、決してお譲りするわけには参りません。しかし…」
「…しかし?…早く申せ!」

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「カブトを外してもう一度、台座をご覧ください」
「…!?」

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そこには変わらず台座に紅いジャバボがあったのです。

「……そういう事か。」
「はい、VRではなく、"本物の" ジャバボでございます。」

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カブトの者はカブトを放り投げると、グワシッとジャバボを掴んだ。絶え間なくその紅いボディを押下すると、童心に返ったかのようにもて遊び始めたのだった。

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従業員はあわて、殿下のカブトをスライディングキャッチ。フ~と額の汗を拭った。そこへ、元カブトの者が言う。

「無から出たジャバボ、たしかに頂いた!」

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「…え?」
「ジャバボをいただいていく! 我をあざむいた駄賃だ。かまわぬな。」
「…ええ…」

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元カブトの者は去り際、振り返る。「有事の際は何なりと申し付けい!」

ニカッとした顔はまぶしく、幸福感にも満ち溢れているようであった。

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元カブト者が、のれんをくぐり外へでていった。のれんには、「無料ジャバ屋」と描かれていたのであった。

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『VR、ジャバボタンが目の前に』より抜粋

— toby_net (@toby_net) 2017年8月20日

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