一斗缶を抱えたその男は、どこかへ向かっていた。鬼のような顔からは、今にも中の液体を職場にばら撒かんとする様子がうかがえた。 道すがら、全裸の中年男性が並走してきたため、着ていたコートをサッと着せる。
— 土用のジャバの日 (@toby_net) October 21, 2016
全裸中年男性は変態露出狂へと生まれ変わった。 拍子にすっころんだ露出狂をよそに、狭い路地を抜けていく男は、警官とすれ違う。 視界に警官を確認した男に鬼面はなく、表情は緩んでいた。
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隙間から肌が覗く中年の姿を見たと思われる警官が駆け出す足音が聞こえた。
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「一日一善」
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一斗缶の男が掲げていたスローガンであった。 これから職場に缶の中身をばら撒かんとする(表情の)男とは思えない習慣である。
息も切らせず目的地へと男はたどり着いた。事務所のドアを蹴り開けると、男は一斗缶のフタを手際よく回し開ける。 遅れて響く「キャー」というサイレン。 続いて「佐藤じゃないか、今日は遅かったな。」、「May I help you?」という警告の音声が鳴りひびいた。
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「……。」 ただただ、一斗缶を高く掲げる姿勢に対して、気を使う者、悲鳴を上げる者などがいたが、かまわず男は缶を放り投げた。
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男が一斗缶を放り投げた頃には、事務所は騒然としていた。 ガラガラと音をたて、転がる缶からは、細かな部品があふれだした。 受験生が間食に食べてもおかしくない手ごろなサイズだ。
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ジャバーッと床にこぼれた紅いボタン。 そうです! 一斗缶からこぼれたのはジャバボタンだったのです! 男は、事務所に通る声で叫びました。
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「返品して下さい!」
「聞こえませんでした? へ・ん・ぴ・ん」
重労働に耐えかねた同僚が可燃性の液体をばら撒きに来たのではなかった、とただただ安堵した事務員たち。 みな状況を理解したのか、事務所は普段の忙しさを取り戻した。
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「」より抜粋
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