東京サブマシンガン

東京サブマシンガン

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

(ゴトッ)
「あの!なにか落としましたよ」
「…あ、ありがとうございます。あやうくサブマシンガンを無くすところでした」
「緊急初動対応の方ですね、おつかれさまです」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「お礼にコーヒーでもどうですか。缶で良ければ」
「…そんな!初動対応だけでもありがたいですのに」
「いえ、サブマシンガンに比べれば安いものです」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「あ、あの!寒いですが、調子はどうですか?」
「ああ、毎日メンテナンスしておりますので」
「いえ、サブマシンガンの方ではなくて…」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「あ、ああ…お心遣いありがとうございます。予備の弾倉もありますので」
「え…?」
「サブマシンガンではなく?」
「お好きなのですね。サブマシンガン」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「コーヒー、冷めますよ」
「ど、どうも…」
「……触ってみますか、サブマシンガン」
「は、はい……冷たいんですね」
「いつもこんな感じです」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「ところで、そのサブ…」
「えっ!はい。はい。三丁目の通りで車が横転? すぐ向かいます!」
「…あっ」
「?すいません、急ぎます」

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「あのーっ!コーヒー!おいしかったですーー!!」

背を向けたまま、緊急初動対応の者は軽く会釈し、通りの方へと向かっていった。自動販売機の明かりが平成の終わりに明滅した。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

残された者はスチールの缶コーヒーを片手で軽く握りつぶすと、次には両手で丸めた。500円玉大の大きさになった缶は、缶の分別には不適切にさえ思えた。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

初動対応と思わしき者の姿が見えなくなるまで、缶は手のひらで転がされていた。缶は完全に元の形をなくしている。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

「紅い…サブマシンガンとは?」

「サブマシンガン」と呼ばれていた物は紅いボタンだった。それは暴徒に向けられるような代物ではなく、クリスマス外れのような無料ジャバをダウンロードするウィジットであった。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

端末でニュースを確認すると、横転した車が燃える映像が映し出された。それは、新しい年のジャバを祝福するような紅い色に思えた。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

『東京サブマシンガン』より抜粋

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

モノクロームにさえる口紅のような紅い、そして情熱的な「サブマシンガン」。それは暴徒を鎮圧するのではなく、ただ無料で落とす《ダウンロード》する為だけに作られた「武器」だ。

— ト (@toby_net) 2018年12月31日

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