様々なカレンシーを首から下げたヤツ。ヤツは、それらをジャラつかせながら、ラップトップを打鍵し始めた。
— トビーネット (@toby_net) 2019年6月25日
電子ドラムにも見えるリズミカルな押下! ヤツと、ピンクにカラーリングされたヤツの計算機はひときわ目立っていた。
— トビーネット (@toby_net) 2019年6月25日
通りすがり、ヤツを見た市井はヤツの風貌を一見し、足を止めた。ほんの一瞬のことであったが、うっかりラップトップを覗き込む形となった。気まずい空気が流れる。
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ラップトップの後ろから気配を感じとったのか、ヤツの打鍵がいよいよリズミカルになる。
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静かなエンターキーの押下。打鍵の緩急に市井は我に返る。 ヤツは、空間に沈黙を与える間もなく、振り返ると市井をにらみつけた。
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「よう兄弟、調子はどうだ。俺のキーボードは今日もゴキゲンだぜ。」
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ヤツはピンクのラップトップに載せていたキーボードを片手で持ち上げると、軽く市井をこづいた。
もし、このとき、ふたたび沈黙が流れていたとしたら、周囲の空気はどうなっていたであろうか。 ヤツなりの機転が無ければ、市井の体という体から体液が吹き出していたことは想像にかたくない。
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「エッ、アッ、ハイ」
— トビーネット (@toby_net) 2019年6月25日
「兄弟、時代はスタディだぜ。歩みを止めるなよ」
ヤツはニヤリと笑顔を見せると、ラップトップに再び向き合った。
いつの間にか市井の前にあったキーボードは、ヤツのラップトップに置かれている。ヤツの体から、キーボードが生えているのではないかと思えるほどの一体感であった。
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『ストリート・エンジニアリング入門』より抜粋
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