紅いセレクトショップ

「今日は投票に行くので帰ります」

政治に熱心な若手社員が、定時上がりに使う手である。

— [編集済み] (@toby_net) September 30, 2017

「ガハハハ。お前、毎日投票へ行ってるな。」

パワハラで告発一歩手前である。しかし、定時で帰られるのでこちらも一歩ひこう

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上司は続けた。
「最近の若いもんは、親戚が少ないんだな。俺の若い頃は、週に一度は親戚の葬式が…」

何やら昔話に熱を上げ上げ始めたのでそそくさと帰宅。

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うそは言っていない、毎日投票しているのは事実だ。帰る道すがら、駐車場まで歩きながら、バッグへと手を入れた。

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おもむろに紅いボタンを取りだしては押下した。

《ジャバッ》

ジャバ音だ。投票完了。

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ある休日、ふらりとインストールしたショッピングアプリが始まりだった。携帯端末に突然警告が出たため、指示に従いあわててウィルスアプリを導入。

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しかしときは遅かった。勝手に見たこともない。ショッピングアプリがインストールされていた。ウィルスに感染しています、という表示は本当だったのだ。

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このときあわててしまい、ショッピングアプリを起動したことまでは覚えている。アンインストールするつもりで、手が滑ったのだ。

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それ以来、不思議な道具が届くようになっていた。

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この前、買った紅いボタンもその一つだ。一日にイチド投票できるのだと言う。そして今日もまた、投票に利用した。

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かなり大きな音で「ジャバ」と鳴るのは欠点であるが、これは次期バージョンで解決されるだろう。アプリ内のレビューにも不満が上がっていた。

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一緒に届いた説明書によると、「何度連打してもジャバと鳴るだけです」とあった。最初の投票以降は、音だけが鳴るらしい。

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実際のところ、本当に投票できているのかは疑わしい。だが、それを口実にいつの間にか定時退社できているのは事実だった。

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定時退社できない ーー この思い込みが私自身を縛っていたように思えてならない。

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ジャジャバッ、ジャバッ、ジャジャジャバッ。昇降式の駐車場からなり続ける効果音に合わせ、ボタンをリズミカルに押下した。

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ジャバジャバ鳴るボタンは、ストレス解消にももってこいであった。

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『紅いセレクトショップ』より抜粋

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ボタン堂に並べられている中で、ひときわ目立つ紅いボディ。白地で刻印された「無料ジャバのダウンロード」の文字。

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凍結されていたプロジェクト、ブロムカンプ監督最新作『けものフレンズ2』(英語名『Beast gang』)として復活。南アフリカにて2038年、撮影開始。

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