ジャバ仙人列伝

自作キーボード編

とつじょとして車椅子であらわれ、各部位に隠したパーツを組み立てると一台の自作キーボードが完成する

— ト (@toby_net) September 15, 2018

犯人は、ガラス製の自作キーボードを花瓶に入れて隠したんだ!

— ト (@toby_net) September 15, 2018

その人間は、バァーンと強くデスクを打ちつけた。すべてのキースイッチが外れ、空中に浮かぶ。おどろいた刹那、すべてのスイッチは、やつがクロスした両手でキャッチされた。 やつは手を開き、パララとキーを落としながら、その成果を見せつけると、ニヤリと笑った。

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60個もあるキーキャップを同時に空に投げると、やつは曲芸を始めた。まるでジャグリングだ。観衆は、残像が見えるほどの手さばきに見とれている。だが、俺はその所作にある違和感を見逃さない。現に、やつの真下、デスクにある自作キーボードは少しづつ組み上がっていく。

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腕をまくったその人間の腕には「ボーザン」とカタカナで刺しゅうが掘られていた。

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一見したところ、巨漢に見合わぬ小さなキーボード。 重量級エルゴノミクスもやつの前では、狂ったパースで描かれた自作キーボードにしか見えない。

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観衆の裏では、ジャバ仙人と複数の弟子が「うたげ」の用意を始めていた。ジャバボタンに偽装されたケースからは、次々に異型のキーボードが現れる。 やつのショーが終わる頃には、あらたな歓声がひびくことに疑いの余地はなかった。

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ジャバ仙人らは、ほんのささいなスキも見逃さない。 やつがパフォーマンスを終え、やつが自作キーボードを完成させた瞬間、やつの手元にキースイッチを発射する。

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ジャバ仙人らの奇襲にも、やつは動じない。 何事もなかったかのように、飛来したキースイッチを自らのスイッチの一つと入れ替えると、余ったスイッチを逆に投げ返したのだ。

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流れる手さばきのほんのつかの間の出来事に、観衆は気がついていない。完成したやつの、自作キーボードに拍手の嵐を浴びせた。その裏では、ジャバ弟子がたった一つのスイッチに複数倒れた。その出来事も拍手にかき消されて、誰も気が付かない。

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仙人はチッと舌打ちをしたかと思うと、無残ななきがらを無事な弟子に運ばせ、脱出をはかった。計画は失敗だ。

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とある低層なビルの屋上、ちりぢりに脱出した仙人と弟子がいた。あらかじめ落ち合う場所が決められていたかのようだった。

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そこにもう一人のジャバ仙人が現れる。 その巨漢は明らかに「やつ」のものだった。 ジャバ仙人と弟子、巨漢仙人が満月を背景にして対峙する。

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「バレては仕方がない。」先に口を開いたのは、ジャバ仙人とその弟子らであった。ジャバの仮面をはぎ取り、仙人ローブを脱ぎ捨てる。弟子らも同様に、脱ぎ捨てていた。

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襲撃は偽のジャバ仙人によるものだった。弟子らも、何らかの思想を受け継ぐものではなく、雇われた者達だった。

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「思想なきもの、仙人をかたる資格なし!」 次に口を開くは巨漢仙人、つまりこれは本物のジャバ仙人ということになる。

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偽仙人と偽弟子らが身構えるより早く、巨漢ジャバ仙人は見合わぬ俊足を披露すると、キースイッチをちぎっては交換、ちぎっては交換していった。

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偽仙人らのキーキャップがすべて真紅に染まったとき、勝敗は決まった後であった。

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月にかかっていた雲は過ぎ、月明かりの HUD(画面表示)が最大値を示す中、巨漢ジャバ仙人は三つに分割されたエモノをカチリと組み付ける一つの巨大なキーボードが誕生した。

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巨大なブレード上の自作キーボードを軽々とかついだ巨漢仙人は、高さなど気にもとめず屋上から飛び降りる。低い音とともに着地。

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月明かりに影を残しながら、人気のないビル街に、ジャバジャバと独り言がこだました。

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『ジャバ仙人列伝』自作キーボード編より抜粋

— ト (@toby_net) September 15, 2018

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