紅い果実

たわわにみのるジャバボタン。紅(あか)くいかにも熟(う)れた実を一つもぎとる(fetchする)。芳醇(ほうじゅん)な香りがストレージに広がった。

— ドーナツの穴 (@toby_net) April 17, 2017

「これならば満足できる品質だ」
いくつかのジャバボタンを採取すると、永続的なストレージへと放り込む。同時にクラウドへと同期がとられる。

— ドーナツの穴 (@toby_net) April 17, 2017

「まさにジャバのためのボタンだとは思わないか」

フードをかぶった人間が声を発した。あなたは答える。

「ジャバ」

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「ふふ、もうジャバしか話せないか」
「ジ、ジ…」
「まあいい。これを一つ食べろ。病に効く」

フードはもいだ小ぶりのジャバボタンを放り投げるだ。ボタンは、あなたが差し出した手にすっぽりと収まるようなサイズだった。

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ジャバリ。あなたは手の中のボタンを押下した。固くもなく、柔らかくもなく、最適な固さと大きさだ、とあなたは感じていた。

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「ジ、ジ、㌩ジャバ…」と、あなた。
「まだ無理か。だが、ジャバ病脱出の気配はあるようだな」

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フードは昔の事を思い出していた。あなたと旅をしていた頃だ。

「あのとき、ここに来た頃は、まだジャバボタンが蒼かった。押下するには十分だったが、熟れているとは言いがたかった」

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ジャバリとあなたはうなづくと、手に持ったままのボタンを再度押下した。

「ジャバ」

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ジャバジャバ。ジャバジャバジャバジャバジャバ。

「どうした。ご機嫌じゃないか。紅いジャバボタンが気に入ったのか」

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フードはストレージ容量を確認すると、移動しはじめた。

「よし、しばらく分のボタンは採れた。そろそろ行くぞ」
「ノット・ジャバ」

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フードにドンと水槽を叩かれたあなた。あなたはゴポポと、小さくいくつかの泡を吐き出した。振動を与えるな、と言いたいあなただったが、ただノットジャバとしか音声が出ないのであった。

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『紅い果実』より抜粋

— ドーナツの穴 (@toby_net) April 17, 2017

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