月面の無人コンビニ営業停止。店主いわく、「客が来ない」。店主は、元ロケット工学の専門家。ある日、自分の店を持つために脱研を決意。それから40年余りの歳月をかけ、月にたどり着いた。
— 新しいデザインになりました (@toby_net) 2017年7月12日
店主が意気揚々と月に店を構えた頃、地球では火星への片道旅行がブーム。月を見ているのは、オカルトムーブメントのわずかな生き残りであった。
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店主はついに決意する。「月にくるハードルが高いならば、通販をすればいい」。
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月面コンビニの在庫は地球に置く。注文を受ければ、即座に地球から発送する。サーバーくらいは月に置きたかったが、快適なレスポンスを実現するには光の速度がおそすぎる。よってサーバーも地球におく。
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店主は通販化にともない、注文の受付、発送、ほぼ全てを自分が居なくても完結するように整えた。可能な限り、自動化もした。
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店主が居なくても回る月面コンビニは、ますますヒマになった。いや、元から月に立ち寄る人間もいないのだから、変わらずヒマ、というのが近い。
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ジャバ、ジャバジャバ
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店の呼び鈴が鳴った。ここ十年で初めての客だ!
一体誰だろう。店主は、月面までコンビニを利用する者の顔が見たくて仕方なかった。
ジャバボタン(以外、ジャバボ)(なお、この時代、店の呼び出しボタンはジャバボで統一されている)を執拗に押下しているものは、フードをかぶりヒゲをたくわえていた。
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その姿は、まるでジャバの伝道師、ジャバ仙人のようであった。店主は小さい頃、ジャバ道徳の本で読んだことがあった。ジャバ学は先行しなかったが、ジャバの逸話は記憶に残っている。
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しばらく黙っていたジャバ仙人が口を開いた。
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「火星にコンビニがないんじゃが、そっちにも店を出さんか」
店主はハッとした。なぜ今まで気が付かなくったのだろう! 月がだめなら火星にも店を持てばいいのだ。 幸運なことに、以前から進めていた「通販システム」は、フランチャイズ化に最適だった。
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ジャバ仙人のツテをたより、火星コンビニの店主をゲットした。とにかくやる気はない奴だが、店主がいなくても回る通販システムを転用しているため、店主のやる気など気にする必要はなかった。
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月面と同様、火星コンビニに客は来ない。片道の旅行者らは実は、火星にたどり着いていないのかもしれない。もしくは、コンビニまで遠すぎるのか。
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月面コンビニ、火星コンビニの通販事業はまたたく間に成長。何もしない店主たちは、特に使うことのない大金をゲットしたのであった。(特に火星の店主は戻れないので、大金の意味がない)
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めでたしめでたし。
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『プロジェクトJ 〜月面コンビニ編〜』より抜粋
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