「死にたい」という彼女のラインに、三十回目にもかかわらず驚き、すぐさま向かうと血だらけの人間が居間で、トイレで、浴槽で倒れている。救急車を呼ぶ。最近は応急処置して連れて行く。待合室で待つ間、ラインに届いていた罵倒を読み込む。
— 新しいデザインになりました (@toby_net) 2017年7月2日
ひとしきり満喫したあと、彼女が勝手に帰っていることに気がつく。タクシー代と治療費を払わされる。保険証がないので、またこなくてはならない。次の日、なぜ帰ったのかと、彼女から230を超える通知が届いていた。悪かったと返信。この端末の通知欄は300以上数えてくれない。
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彼女に昼の弁当を、届け、職場に向かう。電源を切る。休憩中、彼女のラインの罵倒を糧に、定時まで頑張る。おそらく血だらけになっていると思われるので、レバーと亜鉛サプリを買って、彼女の部屋による。
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軽く切っていただけだったので応急処置。確認をとり、以前の治療費の半分をもらう。半分だけといいつつ、数回に分けて全部回収する。
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そんなある日、彼女のラインには見慣れないスタンプが届いていた。あまりに赤いので、また自分の血でアートを作ったのかと思った。
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赤い、というより紅い。これは彼女の、その、血ではないなと悟る。俺の機械学習エンジンがそう判断している。失礼。とにかく、やたら紅く、二次元のはずが、どこから見ても立体にしか見えない。
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とてつもなく、押下したくなる。魅力的なボタンは彼女そのものに見えた。
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罵倒がない。彼女の集大成と思うことにした。押下。
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「ジャバ」!?
連続押下、はじめ!
「ジャバジャバジャバジャバジャバ!」
!?!?!?
彼女がおかしくなったことは一目瞭然だった。ときには、血を撒き散らす日常に、あらわれた静寂な紅いモノリス。ましてや押下するとしゃべる。
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あわてて彼女のもとへ向かった。深夜だろうが関係ない。
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彼女の部屋に入ると、そこには…
『紅い人格』より抜粋。
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眠れぬ夜に生成されたジャバボが待ち受ける
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