新時代のペアプログラミング

「おい、フーバーは退社したのか?」
「いえ、まだいます」

「おかしいな…… おっと午後の予定は、ペアプログラミングだったな」
「もうしています」

そういうと、目の前の新人の腕は、静かに音を立てながら甲羅を外すように展開した。

— 小学ニ年生 別冊付録 (@toby_net) June 1, 2018

片腕に気をとられている間に、もう片方の腕、肩、背中が外側へ向け展開される。そのまま、スッと立ち上がると新人は、膝、脚、腰などを展開させた。まるで、今までパワードスーツを着ていたようだった。

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すべてが展開されたのち、新人と分離したパワードスーツのようなものは、すべての部位が閉じられ、こちらを向いた。

「おまえは…? フーバー? たしかにフーバーだ。」
「ええ、新人教育を頼まれていたのものですから。」

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「まさか、今のがペアプログラミング?」
「ええ、一体型のペアプログラミング手法が提案されていたので、試していたのです。」

「…… まあいい、今度からはあらかじめ報告を。それと、ぼくとのときに「それ」は止めてくれ。」

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去り際、横目でみると、フーバーと新人は肩をすくめていたようだった。
人の少ないフロアなせいか、小声が響いて耳に入った。

「まったく、先輩も試してみて欲しいな。なあ、新人。」
「そうですね。いつまでも古い方法で生産性が… それに「ペアプログラミング」と言わないと通じないでしょうし。」

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「(最近の技術にはついていけん… ぼくの若い頃は、ペアプログラミングやらなんやらをやっと導入したというのに)」 開発室を後にし、打ち合わせへと向かった。

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開発室のフロアでは、新人とフーバーが話を続けていた。

「これが今どきの「ジャバ・プログラミング」だと聞いたら、止められてしまうだろう。」
「違いないです。テキストエディタや統合環境で、決まる時代は終わりました。」

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新人は、先輩の前でおもわずため息をついた。

「アッ…すいません。ジャバプログラミングで疲れたようです。休憩してきます。」
「ン? ジャバティーなら、そこにあるぞ。」

クイッとフーバー、つまり先輩が指し示した先には、「無料ジャバのダウンロード」と付箋が貼られたティーポットがあった。

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「ああ、いえ集中しすぎて疲れました。先輩の思考が速すぎて。」
「わかった。」
「喫煙体験室で休憩してきます」

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新人は、そのままフロアを出ると、喫煙体験室に向かうふりをして、化粧室へと向かった。 その後、多目的トイレに入り鍵を閉める。 そして、新人は、先輩を身体から外すのと同じように、もう一人を取り外した。

「入社直後、半人前とはいえ、一人を演じるのはつかれるものだ。」
「そうだな、兄弟。」

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『新時代のペアプログラミング』より抜粋

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占いクッキーを開けると紙が入っていた。

「先輩が二人いる場合は、片方を上司に、または性別を変えるなど、識別しやすいようにしたいな」

紙切れは、煙を立てて消えた。

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