むさぼりつくように、まぶたを開け、文字を食べている。
— 一般にジャバは以下で与えられる (@toby_net) July 4, 2016
モシャモシャと文字列を平らげている
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なんて、うめえ文字列なんだ。一口食べるごとに、幸福感で満ち溢れる。もう一口だけ、もう一口だけと、視覚野に運ぶたび、処理がなされ、高次のレベルで認識がなされる。
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気が付くと、スクロールバーはこれ以上先がないとばかりに、明滅していた。指を滑らせるとうっすらと見え、うっかり指を離すと、幽霊のように消え去った。
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慌てて、指を連続で押下させたばかりに、チラチラとバーは明滅していたのだ。スクロールバーは、ジャバボタンではないのだから、何度画面を押してもジャバはダウンロードできない。
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代わりに、バーの明滅は、文字列が終端まで認識されたことを知らせていた。ジャバボタンのことは忘れよう。ダウンロードはいつだってできる。
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あなたとジャバ、今すぐダウンロード。今から20年ほど前には、よく見た広告だ。 脳が無意識で認識から消すほど、見せられた。
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そこいらで、ジャバなる文字列を見かけるようになった頃、ネイティブ広告ではないかのうわさが立っていた。今すぐダウンロードできれば何でもよいではないか。そう思ったものだった。
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ジャバが炎上、炎上また炎上を繰り返すうちに、20年余りがたった。炎上するごとに、ジャバの勢力は増し、120兆のデバイスで動くのではないかと噂された。
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まことしやかなその数字と噂は、今、思うとデタラメでもなかったのだ。ジャバには嘘をつくメリットがない。ただ、動くデバイスを増やせばよかったからだ。
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何ゴッグルのデバイスで動こうが、関係ない。それよりも、20年前、今すぐダウンロードと謡っていたジャバが、今でも無料だ。 煽っておいて、ずっと無料。こんな話はあるか。
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ふざけるな! と私は拳を下した。 ジャバ。奇妙だが聞きなれた音声が流れた。下した手の先には、紅いボタン。そうジャバボタンだ。
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20年余り、ジャバは変化しなかったが、私はジャバボタンを買えるほどになった。プライベートでジャバボタンを保有している人間が、どれほどいるだろうか? 勢いよく上がるジャバのバージョンほどには、人類の格差は埋まっていなかった。
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自分だけのジャバがダウンロードされた時、ようやく私は、おちつきを取り戻した。 前のめりに浅く腰かけていた椅子を、深く座りなおしていた。
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ピピッ。 部屋全体に通知音が鳴りひびいた。
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「こんな時間に何だ。私は今、ジャバを……。」
「早朝早く失礼します。」
「早くいえ!」
「緊急の用件です。工場から脱走者が出た模様です。2名ほど。」
「わかった。すぐ行く。」
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掛けてあったスーツを羽織る。同時に壁にかかるムチを取り外した。
メタリックなムチ。室内灯に照らされたムチの節々は、朱色のスーツを映し、真っ赤に染まっていた。
ヒュンとムチしならせると、とぐろのように丸めた。
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早朝のジャバを邪魔するヤカラを許すわけにはいかない。
コツ、コツ、コツ、コツ。 ガラス張りの向こうで、陽が昇る廊下に足音が響いていた。
『ジャバの女』 より抜粋。
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