紅いネイルチップ

足元を見る活「そのペディキュアいいね。なんてやつなの? どこで買えるの? 今何時? どこすみ? おまえの後ろにいる」

— トビーネット (@toby_net) June 25, 2022

そのパーソンが勢いよく上着をはだけると、世界中のネイルチップが体に貼り付けられていた。 あたかも、退役前の軍人さながらであった

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見た目よりも実用性を重視。 金融系、うーんいや、ギャンブラーもしくは不動産関係。靴が新しいわりにこなれている。時計は年代物を使いまわしている。使い古しの靴も大事にメンテしてあるはずだ。

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あなたに一番近いパーソンは…… このネイルチップの持ち主。 会社の金を使い込んだと教えてくれたから、アドバイスをしたらくれたんだ。

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動かなくなった者は、お礼に何もくれはしない。だからぼくはネイルチップを集めているんだ。

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向こうから来て、アドバイスを求める。ぼくが答える。数日後、動かなくなる。 毎回こうだ。誰もかれもが動かなくなって眼の前に現れる

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ネイルチップを集め始めたのは、6年前の夏だ。 あるとき、礼にきた者の中に、動きがいい者がいたんだ。もう少しのけぞるのがおそければ、その鋭利な爪で真っ二つになるところだった。 ぼくは追い詰められていた。

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色々あって、いつもより丁寧にアドバイスをしたところ、ぐったりして動かなくなった。 礼を言うこともなく、ただぼくに自慢のネイルを差し出したんだ。

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ぼくのからだに突き刺さっていたネイルは実に鋭利で、もう少し遅かったらこちらがコレクションにされていた

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そういうわけで、アドバイスはほどほどにという教訓を得た。その結果がこのネイルチップだ。 ゆらめき、ときには光る体表の大量のネイルチップ

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いいかい? 当てててみせよう。あなたの次にすることは…… 言い終わる前に、そのネイルチップ・コレクターは膝を床についてい

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ドスりと膝をついた音ともに、ゴロリとスイカ大の生物がおち、ころがる

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ネイルチップ・コレクターは何か言いたげに口を動かすが、体から切り離された顔からは、声が発せられることはなかった

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あなたは、大量のネイルチップをしばらく見ることはないだろう。ただ。ただ一瞬だけ、無料と描かれたネイルがあった気がした

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「無料」と描かれた紅いネイルチップを見たとき、いや、たしかに一瞬目に入ったものがあったのだが、後に証拠品の中には無かったのだ

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何者かによって紅いネイルチップは持ち去られている。そう確信したあなたは、端末を立ち上げるた最寄りのデバイスを検索し始めた。街から口外へと遠ざかるジャバデバイス、紅いチップを確認すると、証拠品保管庫を立ち去った

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『紅いネイルチップ』より抜粋

— トビーネット (@toby_net) June 25, 2022

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