J氏による個展が開かれるというので、オグモ市にやってきた。
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どのような展示があるか、今から楽しみである。
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入り口に貼られていた張り紙だ。少しくるのが早かっただろうか。しかし、時間は合っている。
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(ジャバ展の入り口に貼られていた壁紙) pic.twitter.com/iaaY7Vfc2E
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ああ、そういことか。私は ーー すなわちあなたは ーー 即座にJavaScript をオンにした。
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おかしい、JavaScript を動いているのに、入り口は開かない。
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扉をよく見ると、下端にメッセージが表示されている。これはヒントだろうか? pic.twitter.com/F6pFJhyXpe
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扉に表示されているメッセージに触れてみた。すると、またたく間に、詳細があらわになったのだ。 pic.twitter.com/3gDriWRrrB
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そうか!ジャバを有効にする必要があるのか。さすが、J氏である。凝った仕掛けを用意してあるものだ。早速、私はジャバをインストールして、入り口をくぐった。
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「JAVAのシステムはこちらで取得できます」このメッセージの「こちら」は、ジャバのダウンロードサイトであったが、疑問が解けた。
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「ジャバ展へ、ようこそ」のバナーが床下でクルクルと踊っている。間違えて踏んでしまいそうだ。(踏むとジャバのダウンロードサイトに飛ばされるのだろうか?)
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受付には誰もいない。
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受付(そうと思いたい)を通り過ぎ、示された順路へ向かった。一面の白い壁、FullHDを思い起こさせる縦横比だ。そして、壁の中央には何かが描かれている。
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(白い壁の中央に描かれたメッセージ。額縁はない) pic.twitter.com/y4k8fKU1qW
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Write once, run anywhere!まさしく、最初のジャバにふさわしい作品だ! 次は何があるか楽しみである。
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順路は上になっている。上を見ろということだろうか?天井だろうか? …ん、これは…
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(白い天井に描かれたメッセージ。やはり額縁はない) pic.twitter.com/PcmLwzDabO
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ジャバじゃ、ない!これは キューティー だ。GUI GUI した画面をつくるやつだ。最近は、クロスプラットフォームを売りに、モバイルにも進出しているという。商用ライセンスもあり、業務で使うにも最適なんだとか。
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順路は下か。まさか、また…
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(額縁はない) pic.twitter.com/H4ocw59lNB
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"1 Million downloads" …… J氏は人をおちょくるのが好きとみた。
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順路を進むと、ようやく病棟のような、企業サイトのような空間から抜けだした。
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順路を進むに連れ、白い空間には草が生い茂っていったのだ。もはや病棟とは似ても似つかない。木だ。J氏は室内に木を用意したのか? ちょっと待て、だんだん道が険しくなっていくぞ。林か?いやこれは森だ!
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(樹海のような空間に看板が一つ。木の額縁に白い紙がプリントされている) pic.twitter.com/WIb3kPD6gS
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(突然の看板) pic.twitter.com/TmKAucm09i
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突然のポップアップに、溜まっていた恐怖心が溢れだした。冷たい冷や汗が流れる。おかしい、これは個展なんかじゃない。ジャバの中だ!早く脱出しなければ……
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焦った私は、密林の太い幹で足をくじいてしまった。しかし、恐怖心と興奮が痛みをやわらげた。私は一目散に元来た道へ走り出した。
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どういったわけか、「順路」が見つからない。病棟のような部屋はどこへ行ったのだ!
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ーー J氏とは誰だったのか。ジャバ展とは何だったのか。体を動かせない状態であっても案外、冷静に居られるようだ。密林に来てから何日が経過したのだろうか。日が経つごとに腕に刻んだものだが、傷が多すぎて数えきれない。
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「あの、大丈夫ですか?え・・・ちょっと、誰か!救急車!え、AEDはどこ?」
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気がつくと、騒がしい街にいた。
しばらくのち、体が浮くような感覚があった。
「ちょっと、そこ、どいてくださーい」
気がついたときには、私は病院の壁をみていた。
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すぐに退院できるらしい、どうやら栄養失調と軽い打撲だった。
すっかりよくなった私は、ジャバ展があった場所へ、私が倒れていた場所へと行ってみたのだった。ジャバ展があったスペースでは、別の個展が始まっていた。私が倒れていたと思わしき、入り口には、赤いボタンが破片となり、散らばっていた。
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赤いボタンの一つを拾い上げると、当時の記憶が流れ込んできた。
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そうだ、密林の中、ただ木に座るしか無い状態で、夢中になって、設定を試していたのだった。
JavaScript をオフ、取り出したクッキーをくだく、ストレージを空に、拡張を全部オフに、そして、最後にジャバをオフに。
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ジャバをオフに。そうか、これが決め手だったのか。残る力を振り絞り、ポケットにあったボタンを「く」の字に曲げ、断裂させた記憶がある。
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「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくり」
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受付の方から聞こえた、女性の声にビクリとした私は、思わず散らばっていた赤いボタンを拾い上げていた。
誰が拾い上げるとも分からない代物を置いておくわけにはいかない。
その後、赤いボタンはどうなったか?
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動画サイトで見かけるミキサーでくだき、煮詰め、コンクリートとともに、一斗缶に詰めた。一斗缶は棒で叩くと、甲高い音がした。
何度も叩くと、音が「ジャバ」と聞こえはじめた私は、気味が悪くなり公園に捨ててきたのだった。
私を事件へと巻き込んだ張本人、J氏とは連絡を取ることはできなかった。
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『境界』より抜粋
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