壁に刺さった端末は、彼女の投擲スキルを克明に表していた。 薄暗い中、刺さったままの端末は静かに明滅する。光る数字列は認証キーだった。パスワードなど信用できない彼にとって、アプリを使った認証は信用に値するものなのだ。… しかしそれも彼女に浮気がバレるまでの話なのである。
— 一斗缶ビルダー (@toby_net) 2016年12月23日
「待ってくれ、あのスマホには俺の…」
— 一斗缶ビルダー (@toby_net) 2016年12月23日
「ナメてんじゃねーぞッ。私よりッ 大事なものがッ。 あるのかよッ。」
「ヒ―ッ!」
ヒ―ッ、と言いながらも彼ピッピは片足を軸に体を回転。ひらりと彼女と体を入れ替えると、端末と彼女の間に陣取った。 バスケットボールにみるピボットの要領だ。
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壁に刺さった端末は明滅を繰り返している。彼ピッピは、彼女がいた方に目線を向けながら、強引に腕を端末へと伸ばした。
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「よし、スマホがつかめた … ? いない!彼女がいない!」
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「お前がつかんだのは、私のスマホだ。」
ジューッという音と共に、少し焦げる臭いが広がった。
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「えっ、あ? ギャー!?熱い!何が?」
彼ピッピは、自分のスマホと思い握りしめた物体が思わぬ感触であったために、状況をつかみ損ねていた。
「グフフ、私のスマホは200度まで加熱し、その熱にも耐えられる耐火スマホなのだ。」
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なんという事だろうか。 「そこまでするか」と言わんばかりの彼は、その表情をみるみる歪めていた。
彼ピッピは複雑な気持ちだった。 彼女の誕生日祝いに買ったスマホが、自らに危害を及ぼすなどとは思いもしないのだ。 スマホの分割払いはまだ半分も終わっておらず、複雑さに拍車をかけた。
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「よし、今度こそ、俺のスマホだ!」
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痛みに耐え、壁までたどり着いた。彼ピッピはすかさず、端末を壁から抜き、画面が消えた端末の認証を行う。
≪ピ―ッ。読み取れませんでした。もう一度、確認の上…≫
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「しまった。さっきの火傷で指紋が……。」
「指紋でロックを解除したかったのだろう? グフフ。今頃気が付いても遅い!」
この件以降、端末は彼女に握られたままだった。 「いざというときのために」と自分の端末に、彼女の指紋も登録しておいたのが裏目に出ていた。 端末もろとも認証キーは奪われ、生活の主導権をも握られたのだった。
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ある日、彼ピッピの前に現れたジャバ仙人。その面妖な武人に不思議なスマホをもらうまで、地獄は続くのだった。
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次回、新型スマホ!その名もジャバマシーン!! 来週も見てくれよな!
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(低い声で) スマートデバイスの時代は終わり、ジャバの時代が訪れる。
『ジャバの小次郎 - スマホ争奪戦編』より抜粋。
— 一斗缶ビルダー (@toby_net) 2016年12月23日