突如として、ワシントンDC 他各国主要都市の上空に現れたモノリス。 ここ富山県、県庁の真上にもモノリスは出現していた。
— トビーネット (@toby_net) December 7, 2020
県が誇るスーパーコンピュータ「剣岳」がモノリスの発する電磁波を解析する。 一斉に「剣岳」のパネルが開き、轟音がうなる。 熱い温風が旅人の侵入をさまたげる。一体、馬何頭分のパワーがあるのか。
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ピピッ、ピーピーピー、ピピ!
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「モノリス が 県庁 ヲ 破戒スル 確率は 95 パーセンッ」
スーパーコンピュータ「剣岳」に接続された圧電スピーカーは、震え、擬似的に合成音声を再生させる
あまりに圧電なために、何を言っているか聞き取れない声であったが、役所の長や県民は、「剣岳」による合成音声を「剣岳」からの掲示と受け取った。
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市や村の代表者たちが集められた。 立山連峰会議である。 いかに、「剣岳」の決定を解釈し、県民に行動をうながすべきか。……すでにモノリスは眼中になかった……
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一方その頃、各地のモノリスは各国主要都市へと降りていた。 ただ、降りていた。上空をおおうほどのモノリスであった。そのため、主要都市は壊滅した。
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一方、「剣岳」と立山連峰会議による決定に従い、県庁を県庁所在地ごと移動していた富山は、破滅をまぬがれた。 新富山の位置はは、旧チバに当たる。
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富山には何もない ーー かつて、世界大戦では焼け野原にされたとやまであった。「隣の金沢には文化遺産があるため、爆撃されないで済んだのだ」そのような噂が義務教育で(妄想として)刷り込まれていたくらいである。
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妄想や事実無根の真実はさておき、富山は千葉に移動した。一方、市町村合併にくみしない、フナハシ・ビレッジだけは抵抗を続けていた。
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フナハシは人口約 3000人 。 小さなビレッジであったが、その独自の行政、産業により、一大要塞と化していた。
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現在、フナハシ・ビレッジ要塞には、産業に従事していた県民、村民が避難し、人口は約10万を超えていた。かつてない人口密度である
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県庁所在地移動の際、放置されたスーパーコンピュータ「剣岳」は未だ有効な計算資源である。
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スーパー計算資源「剣岳」を回収し、モノリスから県を、そして、文化を取り戻すため、フナハシ・ビレッジ・パーソンらは、行動を開始した ーー
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ただ指を加えて旧県庁に鎮座していたモノリスではなかった。 県庁はモノリスと融合し、巨大な迷路と化していた。 富山県庁ダンジョンである
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そして、モノリス県庁ダンジョンを守る守護者、タカオカ・ダイブツが旧自治体の垣根を超え、周囲をうろついているのであった。
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未だビレッジ・パーソンの制御化ではないかつてのスーパー計算資源「剣岳」。 「剣岳」は、人知れず計算を続け、紙テープ出力装置から山のような計算結果をはじき出していた。
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そして、新富山を離れ、旧富山へと調査派遣されていた「ウチ」、「ワシ」、「ヤチャ」の三人組は、先に「剣岳」へとたどり着いていた
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スーパー計算機資源へとたどりつく非常用通路を知る者は、旧県民の一部であった。 三人は計算機資源「剣岳」から、出力された山のような紙テープを発見する
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紙テープは判読可能な文字など書かれていない。 数ビットのビットストリームであった。 「ヤチャ」はビットを手の感覚だけで読みとった。
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ヤチャ「“あなたと……今すぐ……無料ダウンロード“」
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ウチ「それは一体どういう……」
ワシ「……」
ヤチャ「何らかの資料と思われます」
ヤチャは話を続ける。
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「……スーパー計算『剣岳』はライブラリを、県民の図書館を兼ねていました。」
「『剣岳』の図書館機能が、旧富山で開催された会議の資料を出力しているように見えます。その証拠に KAIGI という文字列も読み取れました」
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普段は無口の「ワシ」が口を開いた。
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「ワシが描いた絵じゃ」
声を聞いた「ウチ」、「ヤチャ」、「ジャバ」は顔を見合わせ、意外、という表情を見せあっていた
パーソンらの中に、以外な者「ジャバ」が混じっている事に気がつくのは、その次の瞬間であった ーー
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『北陸モノリス』 ー 剣岳奪還作戦編 ー より抜粋
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