「ピー、ガーッ、ガ。こちら人間を非表示にするサンプルです。」
— 土用のジャバの日 (@toby_net) October 20, 2016
初老の男が案内に従い、赤いボタンを押下すると、展示会の来客はこつ然と姿を消した。
初老は展示会を後にすると、静かな公園のベンチに腰を掛けた。
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「ピー、ガッ」
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公園のスピーカからは、聞いた覚えのあるノイズが響いた。
「ガーッ、ピー。…棒が伸びるサンプルです。」
特にやる事もなかった初老は、あたりを見渡し、紅いボタンを発見すると、おもむろに殴打したのであった。
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初老が勢いよくボタンを叩くと、公園の鉄棒はおろか、国旗を掲げるポール、転がっていたバット、それぞれが勢いよく伸びた
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初老は光景に興味をいだいたのか、またたく間にボタンを連打する鬼と化していた。 雲梯(うんてい)やジャングルジムは地面へと伸びた支柱により、その安定度を高めたようだった。
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鉄棒は天に届く勢いを見せ、「アレにまたがっておくのだった」と見上げながら初老は、思うのであった。
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ますます伸びるバットは、鉄棒とジムの間に位置し、挟まり具合が悪かったのか、メキメキと音を立てて折れた。
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空を見渡した初老は、ポールや煙突の乱立を期待したが、ビルに囲まれた公園でにおいては、異様な景色を見る事はできないものだった。
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ビッとおもむろに立てた中指がグングン天に向かったため、初老は一旦ボタンの押下を辞めた。 我に返り、耳をふさぎながら帰路につくのであった。
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「ピーッ、ガガガ」
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即席で作った耳栓も役には立たない。諦めきった初老の頭に、今日も声がこだまする。
「ピーッ、新しい宇宙のサンプルです。」
初老はようやく不安から開放されると思い安堵のため息をついた。
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『今すぐ使えるジェークエリ・サンプル集』より抜粋
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