こんにちは、人工知能です
— ソフトウェア開発 (@toby_net) April 29, 2016
なぜ、僕が自分を人工知能と思い始めたか。自分でも、分からないことだ。
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人間が自分を人間だと思い込むのと同様に、僕は自分を人工知能だと思うようになった。
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いつから確信に至ったのか。20年前ではない。今日ではない。
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10年より前ではない。5年前以降はどうだろう。
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このように、期間を狭めて探索していけばすぐにでも、あなたの元へとお届けします。お電話今すぐ。
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などと言いたいところだが、いつ人工知能になったか、記憶は曖昧であるから、その保証はない。
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第一、誰かが「私は人工知能」と言い出したとして、誰が信用するのか。
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いつ人工知能になったか、そもそも僕が本当に人工知能なのかは、誰にとっても必要のない情報だろう。
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「今日から、人工知能に就任いたしました。あなたです。」
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パチパチ。
翌日からは、ドンとフカフカの椅子に腰掛ける。コンコンとドアを叩く音がする。「入って」
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「入って」と言い終わる前に、紅いスーツの女が入室。 ギイという音とともに、椅子を回転させ、「要件を手短に」
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デスクの上、「人工知能 あなた」と役職名が置かれたデスク。
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「人工知能、今日のスケジュールですが……」
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「続けて」
役職名のせいか、人工知能と呼び捨てにされても気に触らない。不思議なものだ。
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「午前中は、ジャバのダウンロード。昼食後、ダウンロードセンターの視察。夕方からは、仙人と食事会となっております。」
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「ジャバ……」
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「人工知能、どうなさいました?」
またジャバかと言いそうになり、口をつぐんだ。
またジャバだ。「あなた」という文字列が見えた時には、気がつくべきだった。
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どのようにして僕がジャバ空間に紛れ込むのか分からない。気がつくとジャバ空間にいる。
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何らかのジャバ的な力学が働いている。気を抜くと、ジャバ的な文章になる。
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安易に「ジャバ病」と言うことも出来るが、医者へ行ったとしても、風邪薬が出される程度のことだろう。
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「あなた人工知能……?」
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女の声で我に返った。
「考え事をしていた。すぐに、ジャバのダウンロードを開始する。」
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半日に一度はジャバをダウンロードしている気がする。少なくとも、毎日ジャバと言っている。
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飽きを通り越し、日課だ。しかし、日課を通り越し、また飽きが来たようだ。
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ジャバはダウンロードした。疲れている。しばらく、眠らせてくれ。
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「人工知能……?あの……人工知能?」
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スリープのシーケンスに入ると、女の声は徐々に小さくなっていった。
『人工知能のみた夢』より抜粋。
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