休憩中、端末への着信。
— 超越的小学二年生 (@toby_net) December 24, 2017
「はい、もしもし、あなたです。」
「こちらジャバコイン取引所の今直(いますぐ)と申します。
先日お亡くなりになられた、お父上さまのジャバコインの相続の件ですが…」
「…ジャバコイン?」
「はい、仮想の通貨、ジャバコインでございます。その仮想の取引所、ジャバンクよりご連絡させていただいております。」
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「ええっと、たしかに父は亡くなりましたが。。」
「確認させていただいたところ、お父上さまのジャバコイン残高がかなりの額になっておりまして。」
「かなりの額。」
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「そうです、あなたさま。かなりの額になってございます。」
「それで、そのジャバコインと相続とかなりの額にどのような関係が。」
「たしかに、オヤジ、いえ父は「っつーか」「つぅかぁ」とよく言っていた気がします。」
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「はい、実はお父上さまのジャバコインの利益が相続の際に、やばい含み益になるようでして、ご相談をさせていただきました。」
「…かなりの額に、やばい含み益ですか。」
「あなたさま。ヤバい含み益にかかる相続税のことも考えますと、一度、ジャバドルに換金なさるのがよいのではないでしょうか。」
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「いったん、実在の通貨にしておくということです?」
「よくご存知で。その際には、ダウンロードキーが必要となります。」
「ダウンロードキーがいるんですか。」
「スミマセン。ダウンロードキーというものは知らないのです。遺書にもなく。」
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「まいりました。ダウンロードキーがなければ、私共の方でも換金することがむずかしいのです。」
「なんとかならないものでしょうか。」
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「あなたさま、では代わりに本人確認のため、生年月日と秘密の質問をお答えください。」
「父のですか? はあ… 生年月日は、2038年1月19日です。」
「あなたさま、答えられれば、でかまいません。秘密の質問にお答えください。」
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「はい。」
「Q. あなたとジャバ、」
「A. 今すぐダウンロー
ド」
「あなたさま。本人確認が完了いたしました。ありがとうございました。」
それ以来、一向に連絡はこなかった。不審に思ったあなたは、端末からジャバコインを調べたものの。ジャバンクなる取引所はおろか、ジャバコインさえなかった。
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全くなかったと言えば、ウソになる。 ジャバコインの情報はあるにはあったが、「ありがとうジャバ」なるサイトに、冗談めいた小話が載っていただけだった。
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ジャバコインに関する小話があった、「ありがとうジャバ」内の記事。その日付を見ても、2017年末日の更新である。キツネにつつまれたようであった。
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存命中の母にジャバコインについて聞いてみた。母は水槽の中からコポポと泡を立てた。端末には「母: すみません。お役に立てそうにありません」と表示されるのみであった。
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『仮想の通貨 ジャバコイン』より抜粋
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