「俺にも定時出社とフルタイムができる『力』さえあれば、メガバンク(銀行のシステム)を動かすことができたのに……」手の中のデューク人形を形が変わるまで、握りしめる。
— Call by Need (@toby_net) 7 апреля 2015
金融システム開発は、何重にもロックされたクリーンルームで行われていた。むろん、携帯電話や端末などは一切持ち込むことはできない。ネット接続などはご法度である。
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防護服を身にまとった作業員が、クリーンルームから出てきた。「API がわからなくてな、喫煙ルームにいくと行って出てきた」すぐさま彼は端末をロッカーから取り出すと、検索し始めた。
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「あったあった。このAPIだ」「開発環境のドキュメントがネットを参照しようとして参ったよ。通じないのに。これだから……」よくは聞き取れなかったが、大変そうだ。
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防護服をまとい、長時間のコボルによる開発をおこなっている。開発といっても設計書どおりに対応した命令をパンチ(打ち込む)だけの仕事だ。
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やっと今週の担当分(パンチ作業)が終わった。「借りのチェックをお願いします」向かいの席のリーダー(と言っても直近の階層のだが)に、目視で確認を行ってもらう。
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本来なら、レビュー工程やテスト工程にすぐ回すのだが、差し戻しがあると、時間をロスする。現場の人間を捕まえての「借りのチェック」は必須だ。こんなやり方は、工程表にも書かれていない。現場の知恵だ。
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「これなら大丈夫ですかね」「OK,だと思う。あとここの、修正報告書の線が細くなってるから直しといて」それは前任のつくった書類ままなのだけど、黙って直しておいた。
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「そういえば、こんなソースの差分って見られたっけ?」「ええ、開発環境のこの機能を使えば」「最近は便利になったのだな、昔は……」「チェックありがとうございます。次の作業がありますので、もどります」
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防護服を完全に脱げるまで、あと4時間、さあもう人踏ん張りだ。
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三年もこれを続ければ、「喫煙ルームのAPI検索」さんのようにコボル以外も触らせてもらえるかもしれない。まあ、これからはどうなるかわからないが。 『第二ジャバルーム 労働記録』より
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発狂した人間からシステムを守る開発用防護服。
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脳直結電子パンチャー。毎分5000発のキーパンチを打てる。差分は、優先連結した外部モニタに表示され、作業報告も容易だ。
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高速なパンチャーの開発により、テープを切り貼りしてのコード編集は過去のものとなった。少しの並び替え編集ならば、まるごとパンチ出力してしまえばいいのだ。
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テープからコードを読み取るという作業はほとんど必要ない。大体が「テープにパッチを当てる」という作業だ。
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レガシーシステムとはいえ、コードの電子化はほぼ完了している。(ほぼというのがまた微妙だが) 編集作業は脳内ワークエリアでビムという編集ツールを使えばラクに終わるのだ。
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昔はビムというツールを使うのに、キーボードというレガシーデバイスを使っていたらしい。信じられないことだが、物理デバイスでゆっくりと入力していたなんて信じられないことだ。
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キーを自分で叩いていたなんて、昔は大変だったのだなと、思いを巡らせていた。『第二ジャバルーム 労働記録 ー 給湯室編』
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