異世界に召喚された俺の右腕は、石の中に埋まっていた。
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気絶。目から覚めた時には、紅い棒が右手の代わりに装着されていた。
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紅い棒。よくよく見れば、面とりされた直方体だ。
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「目が覚めたか。」
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紅いスーツに見を包んだ女がいた。
ビーンと手に持つ革のような紐を引っ張るその女の耳は、長く、ミスタースポックのようだった。
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ミスタースポックが何なのか?知らなくても生活に支障はない。
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紅いスーツに、ヒール。そして革のムチ。「またもジャバの開発室に召喚されてしまったのか。」
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思わず漏れ出した思考を聞いてか聞かずか、女の耳はピクリと動いた。ピシャリと、鞭がベッドの手すりを叩いた。
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ただの開発室ではない。女の耳が尖っている。 おかしい。
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通常のジャバ開発者では、スーツの女が指揮を取ることは、まま見られる。
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紅いスーツ、ヒール、高い身長から繰り出されるムチは定番のジャ開発スタイルだ。(誤解を与えてはいけない。あくまで定番の一つだ)
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しかし、今回は趣が異なっている。 「ここはいわゆる異世界なのでは。」
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うっかり発せられた音声を入力された女は、出力として、地面をピシャリと叩いた。
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石のような破片が転がる。下は石畳だろうか。病院のタイルにも見えた、床はしなるムチに耐えられる様子ではなかった。
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「こい、開発室に案内する。」ムチをぎりぎり言わせながらの女は命令口調だ。
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ここが異世界なのか、ジャバプロジェクトのまっただ中なのか、もしくは両者なのか、分からぬまま、あなたはベッドから腰を下ろした。
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後者なら「ここは仮眠室だな。」と一瞬思い浮かんだが、すぐ忘れることにしたのだった。
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その後の光景を見れば、どうでもよくなることであるだろうから。
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『異世界の女』より抜粋
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