本来は存在しなかった人生を生きている感覚
— トビーネット (@toby_net) September 20, 2024
方向、距離、大きさもわからない暗闇を進み続ける人生
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突然、何かに頭をぶつけるとそこは壁で壁伝いに進む。壁に出入り口がないかと。そしてドアを見つけ、開けると向こうには暗闇が広がっていた
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壁を右回りに進もうという安易な考えは打ち砕かれる。同じところをぐるぐると回っていることに気がつく。日付、時間の感覚はないが、数ヶ月前、もしくは数年前に傷をつけた壁の位置まで戻ってきたのだった。
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傷をつけられる。これが一つの鍵であった。ようやく気がついた一筋の穴、そこから差し込む光のようなものだった。傷をつけたときの粉がどこに落ちたか、手探りで探る。下だ。分かっていたが、重力はある。上下がある。下がある。
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しかし、自らを軽く傷つけても体液が流れない。これには困った。壁には環境には現実味があるが、自らに触れようとすると現実味がなくなる。
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ようやく壁の端にたどり着いた。壊せない壁だ。傷一つつけられない。いや、正確にはつけた傷が何かの表紙に戻ってしまう。しかし素直な壁だった。手をついて壁伝いに回ると行き詰まることはないような中座に感じられた
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安堵もついえた。またもや壁を一周してしまったのだ。いつぞやにつけた傷がある。傷は癒えていたが、たしかにそこには感触があった。永続的な傷をつける方法はいくつかあった。
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もっていた食べ物を使うこと。これは何故か残る。ポケットに入っていたものだ。叩くと増える。パンのよう何か。砕いて足跡に使ってもよかったが、無限かはわからない。むやみに使えない。とにかく目印に使うには十分な代物だ。
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鋭利な食べ物にとっては、硬く強化な壁はスーパー独自ブランドのチーズのように柔らかかった。なお、同じブランドには種類があることもあり、この場合はスーパーによる違いを表している
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スーパーによってピザ用チーズの硬さが違う。そのような違いだ。トースターで焼いたときに、柔らかいままか。パリパリになるか。このくらいの違いがある。また焼いたチーズを食べたくなった。
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一度初心に帰ろうとあなたは思うのだった。元いた部屋を探すのは苦労した。いや苦労は苦労だが、外壁を探し当てるまでを考えると、容易だったとも言える。鍛えられていた。
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元いた部屋にたどり着いた。さて、中に入ったものか。あなたが迷い、壁に触れようとしたとき、ふいに響き渡る音が鳴りだした。低く地鳴りのような音だった。それも下、上、地震ではないが構造物が稼働するかのような
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あなたは恐怖を覚えた。まさか地形が変わるのかと。本来ならば壁で囲まれた空間に行き詰まっているのであるから、環境の変化は希望のはずであった。あなたの希望を上回るほどの振動、音であったわけだ
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それは押下された。突然に上から下へ。あなたは気がつくと床に腰を打ちつけていた。痛みは驚きと興奮で中和される。たしかに見たのは押下と呼ばれる現象だった。
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あなたが元いた空間は何らかの昇降機もしくはプレス機であり、そのまま中にいればどうなっていたかは考えたくもなかった。潰されるのがシェイクされるのか、それとも…
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ドッという轟音のち、ジャバ!!という全身に響く音声がつらぬいた。思わず耳を塞いだが、防ぐには全身を塞いでも無駄なような気がした。
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そして、またドッ…ジャバ! 一度、二度ではなかった。
ジャバ!轟音が響くたびにあなたの体はしびれ、高揚していった。始めてゲームセンターの爆音を、浴びたとき以上だった。いや、狭いライブハウスを訪れたときの爆音に近いか。内臓すべてで感じる音。ジャバと何度も鳴るたび、あなたは天国もしくは解脱へと近づくような心地だった
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だが、突然にジャバというあなたをアセンションさせる音は途切れた。あなたはしばらく待ったが、音は鳴らなかった。待つ間、身体がジャバ音を覚えている。身体も中からしびれたままだ。内臓が記憶するというのも本当に感じられた。
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次のジャバを、あなたは座して待つことにした。暗闇の中で。
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『インナージャバボタン』より抜粋
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筆者が地元の仏像の中や観光地の仏像を取材したときの経験を元に書かれた。
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ジャバに夢中になり、朝食(パンの耳、毎朝至急)を食べ忘れた。急がねば
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毎朝食べる耳はその本体を食べたことがない。パン自体はあるのだが、ぶどうやチョコが入った小さなスライスパンだった
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それにしても、人生とはここからはもう違いますよという感覚を日々味わうこととなる。先輩方はよく耐えられたなと近年は実感する。本当はに、三十年前に気がつく感覚だったように思う
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