あ……そこ…すごく、トップダウンです
— ジャバから始める社会生活 (@toby_net) 2016年6月14日
最近のエンジニアさんは、トップダウンから攻めるのね…
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「一服かまわないかしら。」
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「どうぞ。」
紅いヒールは紅いケースをとりだした。
「あら、切れている。」
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次には、「かまわないかしら」と言わんばかりの目線でぼくのケースに目をやった。
「押しますか。」
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とっさに、自分のケースを紅いヒールの前に持っていく。
「ありがと。」
ヒールはケースに目もやらず、こちらを見ながら一言はなった。
ヒールの細い腕に白い手。初めからスタティックリンクされていたかのようなモジュール群が、ぼくのケースに伸びる。指先は紅い。生まれたころにはない装飾。遅延ロードによりもたらされた、白と赤のコントラスト。
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「青いのね。」
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確定申告のことではない。2msec ほど嫌なことを思い出したが、3msec 後には意識は目の前に戻っていた。 ヒールはケースの外観に気が付いたのだ。
「青い時代のものです。」
「珍しい。」
ヒールは慣れた手つきで、青いケースから棒状のアレを取り出した。
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白い手でそっとぼくの棒を握り、赤い指の腹でゆっくりと撫でる。
緩急をつけ、舐めるように手で感触をたしかめ始めた。
アレの先端を包むように、指をまとわせる。じっくりと味わう様子を見ていると、緊張からかゴクリと喉がなった。見るだけで、抑制が効かなくなってくる。
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「…押さないのですか。」
ヒールは黙ったままだ。 棒の表面を触れるか触れないかの距離。最小でいてゼロではないマンハッタン距離感を保っている。座標軸に沿って、動かされる指。
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「押さないのなら先に押します。」
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心の中では、赤い火が燃えていた。しかし顔には出さない。焦らずゆっくりと棒に手触れる。すでに、ケースからぼくの棒を出していたことは、ヒールに気が付かれていないようだった。
「…待って。私が押す。」
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ヒールは、這わせていた指をピタリと止める。
そして、いよいよと、ゆっくりアレを押下し始めた。
ジャバァジャバァ、ジョバァ、ジャバァジャバァ。
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何度も何度も、停止することなく、押される棒。そのたびに、鳴る青いボタン。
ヒールの手から発せられるジャバ音を聞き、ぼくも押下した。無意識のトリガーが引かれ、気が付くと、青いボタンを連打していた。
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ジャーバ、ジャバ、ジャーバ、ジャバ。
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クラシカルなジャバ音が響く。狭い部屋に反射し、ジャバ音は奏でる。
「いい…」
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「いい…」
クラシカルなジャバ音をひとしきり楽しんだ後の、余韻を感じとっていたのであった。
突如、プライベート空間はやぶられた。 異様な服装な団体が、扉を蹴り開け踊り込んできたのだ。 まさか、動的にパブリックに再定義されるなど、思いもしなかった。ぼくは、一瞬 NOP。いや。何度も NOP していた。
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一瞬のストール。予期しない状況がキャッシュミスを作り出した。主記憶からの回復
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。ふたたび、パイプラインが流れ出したころ、ヒールはぼくの腕を握り、強く引いた。
「あざができるのでは?」と思われる強い力だった。結果的に空中に投げられたぼくは、面妖な団体からの速射を交わし、赤いクッションへと着地。 ヒールに握られた腕だけが痛い。
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ヒールは、ヒールはどうなったのだ。 思わず、コールスタックをたどる。スタックとスタックフレームから呼び出し元の座標を割り出すと、すぐさま、インスペクト。
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そこに紅いヒールは居なかった。 ぼくらのジャバボタンをエクスプロードしていた。最初からデストラクティブに分割されていたかのようだった。
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実際、ぼくらは気が付かなかっただけで、あらかじめ分解されていたのかもしれない。 ジャバボタンにはもう一つのメッシュ、分解されたバージョンが存在し、仕込まれていたのかも。そう思うと、いたたまれなくなった。
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紅いヒールにハメられたのではないか? 100msec程 悩んだあと、乾いた音がぼくの意識を現実へと戻した。
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面妖な団体はダリの時計のようだった。彼ら、もしくは彼女ら、または何かは、自身の制御を失い、重力に負け、ソファーや素朴な四角いボックスに横たわっていた。いや、正しくは計算の結果そこにあった。
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中には安定せず、ボックスとボックスの間に挟まり、ブルブルと震える者もいた。団体らの物理法則に奪われた身体を見ると、誰しもがアンコントローラブルのようだった。
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空間を見渡すと、紅いスーツがたっていた。両手でムチを伸ばし、ピシリと音を立てる。
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「大丈夫か。」スーツの気づかい。
「ジャバボタン以外は……。」
「ジャバボタンはまた生成すればいい。だが、我々のボディは……」
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そういうと、スーツはぼくの腕をつかみ。走り出した。
だらしなく横渡る団体の上を、紅いヒールの鋭角な先端が貫いていった。
白い腕につかまれた腕が痛い。
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『社会インフラを支えるシステムの裏側』より抜粋。
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