「あのー、これ、印刷してもらっていいですか?」
— BABY IN HEAD (@toby_net) May 29, 2016
「あっ、ハイ、わか…」
「ウケタマワリマシタ」「ウケタマワリ…」「ウケタマ…」「ウケ…」「ウッ」
突如、フロアのあらゆる計算機が機械音を発した。
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給与所得者らが、ハッとした時には、時すでに遅し。プリンタからは、湯水のように紙が溢れ出した。
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「昨日のリプレースか…」
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昼休みまでには「情シスの連中か、やらかした」と噂が広まっていた。
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「情けをかけるなシステム管理」略して「情シス」である。
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月曜の朝からこれではたまらない。苦情のメールが飛び交う週明けとなった。
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それは食堂がガヤる昼半ばであった。 マスクをした給与所得者らが、扉を蹴りあけ踊り込んできた。
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一斉に扉へと振り向く、飲食中の給与所得者たち。マスクとノットマスクの給与所得者は睨み合う形となった。
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次に、ノットマスクの給与所得者らは、次々に倒れ込み、また机に突っ伏した。正規労働者も非正規労働者もおかまいの様子であった。
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マスクらの中には一人、真紅のマスク、紅いスーツ、全身ジャバ尽くめの人間がいた。
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紅いスーツが掲げていた手を下ろすと、マスクらは退散した。食堂からはシーンという音が聞こえた。
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退出するマスクたちの腕には、「情シス」と描かれた腕章が静かに踊っていた。
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「情シス」、それは「情け容赦ないシステム管理部門」の略であったのだった。
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「バカもの!アレほど、音声認識は disable を true にしておけと言っただろう!」
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ピシり、ピシり。「情シス」と掲げられた部屋からは、怒鳴り声と乾いたピシり音が聞こえて来るのだった。
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『社会インフラを支えるシステムの裏側』より抜粋
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