「黙っていろ」と男はダウンロードを続けた。
目の前の数値はシンとした音で、カウントをダウンする。刻み続けたデジタルが、時を刻み続ける。
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「それで、昨日の晩ごはんは何を食べたんだ」
状況にも関わらず、取り留めのない会話が始まった。その間も、男の手はせわしなく動いている。
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「別に認知症のテストじゃないからさ、安心してくれ」
会話の合間に、状態が遷移されたのか、男は一息。一瞬止めた手は、一ジャバつく前に再度動き出した。
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「いや、黙っていろとは言ったが……」
ダウンロードを続ける中、緊張感からか汗を流し始めた。猫背の背中からは、丸みを帯びた湯気が出始めていた。
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「よし!一本完了。次。」
フゥーと一息ついた男の鼻毛がただちに揺れる。その正確な手つきが、次のボタンを捉える。汗がホイールに絡みつく。
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「よし、完了。また次」
どんどんジャバがダウンロードされていく。画面上の「在庫」横の文字列は動的に変化する。それは数値に型変換すると、物語の終わりを告げていた。
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「……よし」
手を止めた男のため息が、甲の稲穂を揺らしていた。稲穂が動きを止めた時には、男の意識は失われていたのだった。
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ジャバの在庫セールは終わった。
無料という言葉に釣られた猛者たちは、画面に張り付いては全国で、その意識をスリープしている頃だろう。
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男は一人、部屋にいびきを響かせたのであった。
『土用の日の閉店セール』より
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