ゴリラハンター

「ぐふふ、いくらゴリラと言えども、このゴリラアーマーなしでは、銃弾は防げまい」
「ゴホホホホーーッ」
「……ばバか!??…なギョッ」

— トビーネット (@toby_net) January 24, 2020

そもそもゴリラアーマー自身、ゴリラの体表から作られた防具なのだ。ゴリラのために作られたアーマーではない。

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人間用に加工された重武装のゴリラアーマー。それとは異なり、ゴリラはネイティブでゴリラアーマーを着込んでいる。 決着は容易だ。

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「ホッホッホッウーッホッ」

声にもならぬ、お叫びが一つなるたび、ゴリラの戦利品は増えていった。

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ゴリラのねぐらには、これまで拾ったゴリラアーマーが勲章のようにならぶ。

彼らが警戒するゴリラ狩り。それらゴリラ狩りにとっては、ゴリラアーマーは個性を表す武装でもあった。様々なアタッチメント、身分を表す装飾、副兵装を備えたサブアームまで備えたものもあった。

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しかし、人類の知恵の結晶でもあるゴリラアーマーらも、ゴリラにとっては、トロフィーに過ぎない。

他にも、戦利品として、もう毒が塗られた短刀ゴリラキラー、首のつけねから両断する背丈はあるゴリラアックス、人類には早かったゴリラ専用ゴリラ刀…

ゴリラのねぐらは差し詰め武器庫のようであった

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そんな中、数km 先かはたまた数ジッkm先か、今までにない殺気を感じとった。ゴリラは新たな敵を察知した。

これまでにない感覚だった。嗅いだことのない臭いだった。
あらゆる想定をしたゴリラは、アーマーを着込み、自らを守り、ハンターを迎撃する装備として彼の最高の「トロフィー」を身にまとった

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相手が相手ならば、惜しんではいられない。

ゴリラは彼の「武器庫」を悟られぬよう、殺気と一度に離れるようにジャングルを動き、殺気の外から相手の斜め横から回り込んだ。

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殺気の圏内にふれた矢先、ゴリラは感じとった。ゴリラアーマー越しに、何か情報が伝わってくる。

「無料…?」

ゴリラはそれが何を意味するか分からなかったが、呪術や願いのようなものであることは分かった。

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今までも撃退するハンターから、呪詛のように見える言葉や、懇願の言霊は聞こえていた。発音を真似しようとしても発音はできず、ただ心の声として自分で、発するだけであるが、何度も聞けば心にも残るというもの。

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「無料」 殺気から放たれるには、まったく理解ができない。ゴリラの文化圏のはんちゅうを超えた概念であった。

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呪術的な殺気から、やばさを感じとったゴリラは、いったん引くことにした。 このジャングルは庭のようなもので、ねぐらに、そう武器庫に近づけば近づくほどに罠がある。 備えあればゴリラなしである。

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今回は違った。ゴリラは自身の仕掛けた(中にはハンターが残した爆発物でこしらえたものもある)罠ではとうてい追い返すことのできない相手であろうと。 外れていたとしても、決してわかり会えぬと。もともとゴリラだし。

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ねぐら、武器庫に直接戻らず、念入りに観察する。 直後、爆発。殺気はおとりだったのだ! ゴリラのトロフィーは今をもって消滅した。自ら身につけている最高のもの以外。

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火というよりも爆発だった。 ジャングルが燃えることを警戒してのことだろうか。いや、このジャングルはそうは燃えない。高温多湿、風の通りはわるい。霧がかからない日はない。とにかくゴリラの家は無くなった。

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先程までの殺気が消えている。 うかつだった。ゴリラははじめから誘いだされていた上に罠をもうかいされ、相手の計画にまんまと引きずり出されていたのだ。 今回ばかりは、野生の警戒心がアダとなった。

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「無料…」「ダウンロードせよ…」

どこからともともなく、四方からか、上から聞こえる呪詛のような声は、意味はわからずとも、意味はわかる。

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悪夢だ。 今まで一方的に、いや苦戦したことはあったがひるむことなど無かった。ゴリラはジャングルで一人で戦ってきた。他のハンターの種類のハンターの情報にはうとかったのだ。

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「ジャバ…」

空気が擦れるような音。暗転。声が聞こえたときには、ゴリラは意識を失っていた。いったい何があったのだ。…幸運なことに、当時を振り返る意識は、今はある。

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助かった。とゴリラは安堵した。歴戦のゴリラもこの時ばかりは、「命拾いした」と声を発していた。言葉には出せぬが。…声に出せるではないか…?

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「気がついたかの…?」

たくさんの管が付けられたまま、固いベッドから起き上がるゴリラの前には、仙人のような風貌のものが立っていた。

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「ジャバッ、無料、ダウンロード」

それらの声を聞き、こわばるゴリラ。

「…聞き覚えがあるであろう。まあ安心しなさい。ここではよい言葉として使われておる」

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当時「仙人」というものを、なぜ認識できていたか、など疑問にも持たなかった。とにかくゴリラは、俺は、ジャングルを抜け、新たな世界を見ることとなった。

— トビーネット (@toby_net) January 24, 2020

「ゴリラハンター」より抜粋

— トビーネット (@toby_net) January 24, 2020

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