男の脳には不安解消チップが埋め込まれた。チップのセンサーは不安を感知する。不安を察知したチップは、あるときは視神経へ信号を流し押したくなるジャバボタンを見せる。またあるときは、ジャバの更新画面を見せる。
— ドーナツの穴 (@toby_net) 2017年5月25日
男はジャバには余念がなかった。 すぐさま目の前のボタンを押下しにいく。もちろんそれは幻である。
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ある日には、更新画面を見せた。プログレスバーが伸びる。今か今かと更新完了を待ち、男はグレーの「完了」ボタンが enabled になるまで立ち止まっている。
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ジャバボタンを押下、もしくはジャバアップデートをクリアした男の顔はすっきりしていた。 「ジャバをダウンロード、または更新している場合ではないのではないか」そのような自責の念を感じることはなかった。
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男の不安はいずこかへ消え去っていた。
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不安解消チップはある女にも埋め込まれていた。 部下がなかなかジャバをマスターしてくれない、と不安になっていた。
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すぐに不安を検知したチップは、女にテキスト端末を見せた。 よく見ると、ファイルが洗いざらい削除されている。あわてて強制終了のキーを押そうとすると、目の前の端末は消えた。
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網膜合成端末ではなく、不安解消チップによりオーバーレイされた治療プログラムであった。「そんなこともあったな、ワハハ」と女は思い出し、部下の事を忘れた。
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その後、出社がいやになっていたはずの女は気を取り戻し、「探さないでください」と電信を会社へと送ったあと、終点へと旅立った。
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『不安解消チップ』より抜粋
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