環境浄化人間

「スキャンの結果、あなたは子供に見せられません」
「おい、待てよ。 その手にはのらねえぜ。これでもスキャンしてろ」


「スキャンの結果、あなたは子供の教育によい結果をもたらしません。 私をシャットダウンしています」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

等身大鏡を持ち歩く全裸中年男性の勝利であった

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

環境浄化工場から生えたパイプ。その隙間からは白煙が吹き出している。 工場の周囲をライトが照らす。 巡回する環境浄化セキュリティは一定の軌道を描き、日々、環境悪化要因を検出している。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

「よい環境で、よい社会!」
「よい環境で、よい社会!」

「声が小さいぞッ!」

「温かい 心がつくる よい環境!」
「温かい 心がつくる よい環境!」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

「よい環境を!」
「よい社会を!」

「…例の件はどうなった」
「それがまだ見つかっておりません…」

「全裸男性、一匹見つけられんのかッ」
「申しわけありません! 温かい心が足りませんでした! 何とぞわたくしめに…」

「まあよい…早く捕まえたまえッ!」
「よい!よりよい環境をッ!」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

等身大鏡を隠れみのとし、潜入する全裸中年男性。セキュリティが異変に気がつく。

「ん? 今なにかよくない環境が…?」

鏡の裏に隠れる全裸中年男性。セキュリティが鏡をのぞく。

「…これはよい環境だ。よい環境に決まっている。なにせよい環境を作っている私だからな」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

「最高環境改善室」と書かれた部屋に押入る全裸中年男性。気配を感じた室長は叫んだ。

「奴は捕まえたかッ!」

黙って等身大鏡に、自身を隠す全裸中年男性。鏡を舐めるように見回す室長。

「…これは、よい環境だなあ。素晴らしい社会が見える」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

あまりに不自然な環境要因に疑問に思い始める室長。あごに手をつけ、自分自身を眺めながら考える。

「このようなよい環境を、一体何者が…?」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

一瞬スッと倒れる鏡。パタッという音ともに、我に返る室長。そして、周囲を見回し異変を確認する。

「なッ… この環境の変化は一体!?」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

室長の手があごから離れる前には、デスクの下に全裸中年男性は潜んでいた。室長のデスクだ。デスクの中には、狙いのものがあるはずだ。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

ガタガタッと室長のデスクの引き出しを開けてしまう全裸中年男性。 音に気がついた室長がデスクへ振り向き、言いはなつ。

「この環境音は何だ!? いい音を出しているなッ」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

室長は続けて言う。

「私のいいデスクを開けようとする者がいるのは分かっているぞ。極めていい音がするからなッ 」

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

あわやという所で、全裸中年男性はスペアの鏡をデスクに載せた。室長は光る鏡に気が付かず、そこに映る者に目を奪われていた。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

「なんだ、私か。…よい環境がよい音を作ったにすぎないな。」と室長。

室長がデスクに近づき、そこには鏡しかないことに気がついたときには、全裸中年男性は部屋を離れていた。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

けたたましく鳴りひびく警報の中、工場を脱出する全裸中年男性。 その者の手には紅く、そしてピッタリと手にフィットするちょうどの太さナガサのボタンが握られていたのだった。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

環境改善工場の外にセキュリティはいなかった。 セキュリティが見回った工場の各部屋には、鏡がしかけられたいたのだ。

釘付けにされたセキュリティが全裸中年男性に気がつくことはなかった。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

工場から離れるたび、ときおり鳴る「よい音」は、すべて紅いボタンから発せられた音であった。

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

『環境浄化人間』より抜粋

— トビーネット (@toby_net) 2019年8月31日

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