「用意はしてある、戸棚を開けろ。ドーナツの穴にキーは隠されている」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
電話の向こうの声は、変声されている。どこかで聞いた抑揚だが、気にしている時間はない。あなたは、ジャバりと 棚.オープン(); すると、ドーナツの穴は消失していた。
「おいどうなっているんだ!ドーナツの穴はおろか!ドーナツすらないぞ」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
ガチャッ、ツーツー。
電話は切れ、手掛かりは途絶えた。戸棚にドーナツはなかった。一体、穴はどこに持ち去られたのであろうか? ドーナツの穴。構成する柔らかな物質を崩すだけで、失われるほど脆弱な穴であった。
食卓に見慣れない付箋が貼ってある。
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
「なになに… 『ドーナツは食べました。代わりに、冷蔵庫のプリンはあげます。私より』…」
思わずあなたが電話を放り投げると、冷蔵庫からは無機質特有の悲鳴が上がった。
「プリンには『ドーナツの穴』はない……」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
悔しさのあまり、手に持っていたものをつぶした。
電話とは別の手に持っていた、その物質は柔らかく、ぐにゃりと変形し、しばらくのち、ベタリと床に落ちた。
プリンがドーナツにある穴の代替にならないことを知っていたあなたは、何か方法がないか記憶を探索をし始めていた。
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
「見える…… これはドーナツだ……まだ穴はある。 そして、付箋、プリン、そして…」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
そして?
「私だ(つまりあなた)」
「もしや、電話の向こうの声は…」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
あなたは録音アプリを取り出すと、履歴を眺めた。電話で聴いた声だ。編集前の声を再生。あなたの声であった。机の前に向かう。付箋を見る。まるであなたで書いたような字だ。冷蔵庫のプリンは、昨日コンビニで買ってきたものだった。
「つまり、ドーナツの穴のありかは…」
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日
あなたは視線を下に向けた。先ほどまで存在していたであろう、穴がその形状を保てなくなり、本体はつぶされた状態で転がっていた。
『ドーナツの穴』より抜粋。
— ジャバとドーナツの穴、それらの意外な関係 (@toby_net) 2016年3月16日