「バーチャルドム、バーチャルドム」とつぶやく夫が気になり、ある日、寝室をのぞいた。暗い部屋には彼とパソコンしかなく、ディスプレイの光が彼の顔を照り輝かせていた
— トビーネット (@toby_net) July 12, 2020
バーチャルドムとは何だったのか。 結局、その日は分からなかった。次の日も夫はバーチャルドムとつぶやいている
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夫は「何か隠し事をしているに違いない」そう思ったあなたは、バーチャルのドム(本質)を突き止めようと探偵を雇った。
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数週間後、ドム(本質)の調査結果が出た。 調査報告書を出しながらも探偵は、「特におかしな様子はない」と言う。「ただ……」。「ただ…?」
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夫は仕事(かもしくは趣味)に興じているのだという。しかし、そのドム(本質)について熱心なあまり、一種の信教のように見えなくもない、と
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「あなたも気をつけてください」。 探偵はそういいながら、あなたに請求書を差し出していた。
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探偵が調査をしている間も、夫はバーチャルドムについての熱心に語っていた。誰に言うでもなかった。ときには、あなたにも説いていたが、それは独り言のようにも見えた。
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夫はあなたにバーチャルをドムるとき、決まってまくし立てたあと、スッキリしたような顔つきで、彼の部屋へと戻っていた。
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ドムるのは彼なりの儀式なのかもしれない。あなたは夫の口座に振り込まれた金額を確認し、バーチャルの影響が何事もない事を確認した。
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その後、金額が減った口座を見た夫に怪しまれたが、まさか探偵にドムの調査依頼をした、とも言えなかった。
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仕方なくあなたは SNS に今回の顛末を書き込む。夫の追求は止んだ。夫はいつの間にかあなたの書き込みを読んでいたようで、納得しているようだった。
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口座についての追求が終わる頃には、夫の関心はまたドムに向かっているようだった。 仕方のないことだ、とあなたは半端あきらめることとなった。
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ドムを気にしなくなってから数年は過ぎただろうか。近所の見知らぬ面識のない隣人に、あなたは呼び止められた。隣人は言う。「最近、お宅のドムみなくなったわね……」
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隣人と目を合わせていないふりをすると、あなたはそそくさとその場をさった。いまさら、ドムについて夫に聞くこともままならず、忘れることにした。
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隣人もふれてはいけないと思ったのか、それ以降、話しかけてこなくなった。
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『ドムとは何だったのか』より抜粋
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