「あなたにも出来るジャバ入門 《無料!》《今すぐ始められる!》」
ヴァー氏の視線は異様なブックカバーに釘付けであった。
— null (@toby_net) December 1, 2015
混雑した車両の中にも関わらず、ヴァー氏を惹きつけたのは二点だった。
・なぜ、目立たないブックカバーをかけないのか
・ジャバとは何なのか
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「『あなたにも出来る』などと…ありえない…」
うっかり口走り、氏は公開した。無論、心にもないことだ。
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すでにブックカバーの有無のことは忘れていた。脳のワーキングメモリからは追いやられていたのである。
残るは、ジャバ、そしてあなた。
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「あなた…ジャバ…あなた…ジャバ」
特異な語感はヴァー氏の執着気質を刺激する。
氏は、環界との一体化を実感しつつあった。いや、むしろあなたこそが氏自身であるような気すらした。
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状況が閉塞し、展開不能性を失いかけた時、トビラが開く。新たな転回が生まれ、秩序空間は崩壊した。
目の前の男は、降りたのだった。
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結局、ジャバとは何だったのか?
インクルデンツをレマネンツした氏は、ブックカバーを追い、無料の束縛とあなたを乗り越えるしかなかったのである。
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白線を踏み越え、移動するブックカバーをモメントしていく。
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「前方、牛乳を飲み干す男性、静止中。1時の方向、女性二人組、キャリーバッグ、イベント帰りと推測」
人混みを回避するために、ヴァー氏は人感センサーの範囲を拡大。
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「有料、これも有料、無料、有料、無料、クソッ!ジャバはどこだ!」
ヴァー氏の人感センサーはノイズに弱い。こうなれば、更にクエリーを追加するしかない。
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「嗚呼…あなた、あなた、あなた、あなた、あなた…… そして、あなた」
目標を捉えるべく拡大した範囲へのクエリーは、あなたを捉えた。その数70億。
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「俺はあなたすらも、見つけられないのか…」
ヴァー氏は、今までの気丈な振る舞いから一転、無価値な存在となった。
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うずくまるヴァー氏を気遣うものがいた。
「あの…… 大丈夫ですか?顔色が優れませんが」
伸ばされた手を掴もうとした時、小脇には「あなたでも分かる……ジャバ」の文字が見え……
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