衝突

「わざわいじゃ… アレを招いてはならぬ…」
我々調査団が、立ち寄った村でよい顔をされた事は無かった。
衝突した SHA-1 を運搬中であることを村のシャーマンらは知っていたのだろう。

— あなたとネットフリックス (@toby_net) February 23, 2017

「衝突済み」と赤文字で描かれた金属のボックス。側面に付いたバイオハザードなマークが禍々しい。この中に、あの時の SHA-1 が入っている事は私しか知らない。

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確認のため、ときおり格納容器を覗く。SHA-1のボックスは震えており。振動といったほうがよいか。それでいて、ある方角へ向かうかのように、常に容器の一方向に寄っていた。

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我々は調査団という名目であるが、その護衛にはどこかの国の傭兵でも連れてきたのか、と思わんばかりの人間たちが連れ添っている。明らかに不自然だ。

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隊員たちは、仕事だからと割り切っている様子。一生遊んで暮らせるだけの報酬が前金で支払われている。皆そうなのだろう。それは、隊員の余裕ある表情から伝わってくる。

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この仕事を終えたなら、私は報酬を元手に店を構えるつもりだ。念願だった、グレートファイアーウォール付近に、ビルを建て、グレートマンを売るのだ。もちろん、保温機で隣に並ぶジャバマンは即完売する。

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オーサム揚げもいいな。カラッとして中はバイトコード。思わず「エピック!」と叫びたくなる。エピックとくればジャバ豆からとれた無料ダウンロードコーヒーも出すつもりだ。

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無料ダウンロードコーヒーは、サービスではなく。これがメインの商品。ジャバ豆がいかに美味しいか。それを知ってもらうべく、ビルを構えるのだ。

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考え事をしていると、もう次の村だ。各村に立ち寄り、食料、燃料、その他、弾薬等も(未だ消費された様子はない)などを補給する。

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あたかも予言されていたかのような周到な準備がなされている。行く先々の村には、我々が欲するものが、協力者により配付されているようだった。予定通りだ。

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ほぼ全てが白ヒゲで覆われた村の長老が現れる。

「起こるべくして起こったことだ。あなたが、何もないものを運んでいてもなんの不思議もない。」

片目をヒゲから覗かせ、見えぬ口を動かした。

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突如、私は気を失いかける。一種、頭がズキりとする感覚があった。棒で殴られたのだろう。まずい、この村は先客がいたのだ。

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体が動かない。血が目に入った。どうなっているのだ。銃声が聞こえ、爆発音も混じっている。ドドドドとけたたましい発射音が聞こえる。

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私は気を失った。

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(暗闇で水がかかる音)

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私は目を覚ました。しかし、体は動かない。縛られているようだ。何かに座っている。状況はつかめるが、どこにいるのか、周りに何事があるのか。分からない。見えないのだ。

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何かが焦げた匂いがする。肉だろうか。目は見えない。というより、何かを被せられている。そのせいか、呼吸も苦しい。息を吸うたびに何かが口に張り付く。

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「例のブツ、は、どこへ、隠し、た」
ブロークンなイングリッシュが私の耳に入る。
「モゴモゴ」
「ねえんだよ。何も!」
私は驚きを隠せず、モゴモゴ言うしかなかった。

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不快だ。私を尋問している壊れた英語の事ではない。水で服がピタピタに肌にはりついている事が、不愉快なのだ。一刻も早く、この状況を抜け出したいさもなければ、私は…

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クソッ、輸送物はおそらくダミーだったのだろう。もしくは、衝突した SHA-1 など無かったのだ。ただ概念が運ばれていたと言う事も考えられる。

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今頃、私の雇い主は、この村ごと吹き飛ばす算段でも建てているのではないか。我々の状況がどうなっているのか派筒抜けなのだ。何も連絡がない。無い、もしくは無かったSHA-1の衝突。テロリストのいる村。

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SHA-1の衝突など、無かった事にしたいのかもしれない。

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いや、そんな事はどうでもいい。私にとって一番の災難は、ビショビショになった服がピッタリと肌に張り付いている事だ。我慢ならない。こんな事なら死んだ方がましだ…。何とかこの状況を抜け出さなければ…そして私は…

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『衝突』(原題『Collision』)より抜粋

— あなたとネットフリックス (@toby_net) February 23, 2017

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