ベン2

「一日に何本くらいお吸いで?」
「おい、今は何年の何月だ!」

「2019年のベンツです」
「...4年もずれたのか」

「あのときから吸わなければ、今頃は買えていたのですよ」
「...まさか、あのときのッ」

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

「それでは、次は 5年後に」
「待てッ、5年後もいるのか!?」

「ええ、あなたがあそこのベンツを買えるまでは」
「...そんな、馬鹿な」

「どうされたのですか」
「オ、オレは。 2038年のオレはまだベンツを...」

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

「では、次は何年後にお会いしましょうか」
「......」

「いつでもよろしいですよ」
「80年...80年前だ!それだけさかのぼれば」

「分かりました。創立してお待ちしております」
「...待ってくれ、あなたはもしや」

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

「そんなことよりも、あなたがジャバボタンを吸わなければ、増えたデバイスもあります。ベンツとどちらが大事ですか」
「...いったいどこでそれを」

現代には似つかない風貌の男は、それまで内に隠しもっていた紅い箱に手を当てた。 自ら、ジャバボタンを持っていると示してしまった。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

現代の街に溶け込むことのない男。そして、ベンツの者。互いににらみ合う。
しばしの沈黙。その間には、噴水の音がジャバジャバと聞こえる。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

男はいつの間にか中身のないジャバボタンを握りつぶしていた。同時に、ジャバッと音が鳴るも、ベンツのクラクションがかき消していた。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

噴水の音はまた響く。ジャバジャバ、ジャバ。
ベンツのパワーがウインドウし、 黒い帽子の影は二人に挨拶をした。

「主人がいつもお世話になっております。」
「....なんだって」

「家内だよ」

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

再度、ベンツのクラクション。

「若人(わこうど)よ。どうやら今回もここまでのようだ」
「〝も〟だって!?」

「知りたければ、〝小さき太陽〟を追うがよい。
今のあなたならば、たどり着けるはずだ。意味はそこに置いてある」
「サン?サンのことか!? しかし、サンは今や」

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

沈黙。ッバ。噴水の音が止んだ。 突然のジャバ音。 いつの間に、ジャバボタンを落としていたのだろうか。

男はジャバボタンを拾う。 先ほど眺めていた方を見ると、ベンツとその夫婦の姿はすでになかった。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

男は誰へともなく、焦った顔を隠せなかった。ジャバボタンに気をとられた隙に、またもベンツから遠ざかったのだ。

「いったい、いつになったらあのベンツを....いや手がかりはある」

そう、〝小さき太陽〟 、「創立」そして「家内」。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

「小さき太陽」 、「創立」、「家内」。その後、これらがどのように男をベンツに向かわせたのか。 そして、ジャバボタンとは。 男は、ゆっくりと歩きだし、この時代の知人と約束した BBQ へと向かい、その後はすべてを忘れ 2038年へと帰宅した。

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

『ベン2』より抜粋

— トビーネット (@toby_net) September 4, 2019

ジャバ名作劇場 に戻る