新年あけまして、誰もそのルーツを知らぬまま毎年のようにミサイルを北に発射、おめでこうございます
— 一億抜刀 (@toby_net) January 6, 2016
「なぜ、年が明けるときミサイルを発射するのですか」
「そのような決まりが、我々の伝統としてあるのです」
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「挨拶代わりにミサイルは物騒ではありませんか。ジャバをダウンロードするだけでは、いけないのですか」
「昔からのしきたりなのです」
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すみません、お客さまがいらっしゃいましたと女将(おかみ)は会釈をされました。次には赤いボタンを三度叩いては、お客さまの挨拶とされたのです。
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いくら伝統といえども、新年のしかも挨拶のたびにミサイルを発射しては、対象もたまりません。私は少し思案を始めました。宿を離れるまでに、少し時間があったのです。
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昨年、泊まった宿のことを思い返しました。そこでの新年の挨拶は、ジャバをダウンロードすることだったのです。(先ほどのジャバはここから来ているわけです)
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そうかと、私はある考えを思いつき、すぐさま行動に移し始めました。
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手元には、昨年の宿からくすねてきたジャバボタンを持ち、カバンから取り出したヤスリをその赤いボディにかけはじめました。
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(シャリシャリ、シャリシャリ、ジャバジャバ)
みるみるうちに赤いボタンの文字が無くなっていきます。「無料」と書かれていた文字は、今にも消え去りそうです
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仕上げとばかりに、サンドペーパーでこすり、コンパウンドで磨きあげました。
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そして、女将がお風呂に入るのを確認しました。すかさず、私はミサイル発射ボタンと、私の作ったジャバボタンの入れ替えをやってのけたのです。
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次の日、女将を影から観察していました。忙しいのか半日はひっきりなしに、挨拶をしながら赤いボタンを叩いているさまを見られました。
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してやったりといった表情を私は隠しきれません。思わずニヤけた顔を隠しながら自室まで戻っていき、帰る支度を始めました。
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「もう帰られるのですか。もっと、ゆっくりなさってイカれたらどうでしょう。お風呂は湧いております」
艶のある声にギクリとした私は、ニヤけた表情を手で隠すと、
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「用事を思い出したので」などと適当な理由を返しながら、そそくさと帰り支度を終えました。
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ー その日の夕方
「女将さん、お世話になりました。それでは失礼いたします。」
「もう一日泊まってイカれたらよろしいのに… 仕方ありません。名残惜しいですが、またお越しください。」
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女将さんは帰り際、小さく「ありがとうございました」と赤いボタンを叩きながら、私を見送ってくれました。
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帰り際、ジャバステーションに向かう道すがら、お客さまを送る際は、例の物騒な挨拶をしていないことをふと思い出しました。女将さんのお礼とボタン押下の意味を知ったのでした。
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『新年の挨拶とそのルーツ』より
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