新しい元号は「西暦210」です。
— 超越的小学二年生 (@toby_net) December 22, 2017
(パシャパシャ!パシャパシャ!)
時代に似合わないフラッシュが炊かれる。その様子は儀式的ですらあった。
新しい元号に変わってから早くも 20年が過ぎた。
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「次の方どうぞ」
役所はまだ人間が対応している。
役「まず、ここに今日の日付を書いてください」
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私「ええっと、今年は2120年だから…」
役「和暦ですので、"西暦21020年" ですね」
私「…紛らわしいですね」
役「我々もいつも分からなくなります」
私「ちょっと待って下さい。2100年のときに和暦は "西暦2101年" ですよね」
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役「いえ、"西暦2100年" です」
私「そうでしたっけ?」
役「変わったんです。 "西暦210" から平成0年があるようなものです。」
私「ああ、そうだった…」
私「…ほんと紛らわしいですね」
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役「我々もいつも分からなくなります」
私「ところで、2038年問題は大丈夫だったのですか?」
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役「…? ……ああ、コールドスリープされた方でしたか」
役「何も問題は起きていませんよ」
私「それな…」
役「我々もいつも分からなくなります」
私「えっ…?」
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役「我々もいつも分からなくなります」
私「すいません。ここは役所ではなかったのですか?」
役「我々もいつも分からなくなります」
私「……」
その後、私は役所を後にした。いや、「かつて役所であったところ」と表現した方がいいだろう。 鉄筋がむき出しのいり口をくぐると、建物は崩れていった。危ないところだった。
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2038年の厄災にそなえ、私はシェルターにて眠っていた。スリープ装置は、エネルギーの外部電源、予備電源からの供給がとだえ、起きたばかりであった。
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実際のところ、今が何年なのかは分からない。しかし確実なのは、先ほど崩れさった役所のような光景がそこらじゅうに広がっている事であった。
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私は孤独感にさいなまれながらも、ジャケットから紅いボタンを取り出した。
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紅いボタンは押下するたび、懐かしいジャバ音が鳴りひびき、私の心を癒やすようであった。
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『西暦20120年』より抜粋
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