あなたとジャバ、今すぐダウンロードの改行位置に関して

広く活用されているプログラミング言語「ジャバ」は、ジャバシーが中間表現を出力し、実行時にこの中間表現を機械語に変換することで高速な実行を実現している。 また、クラスライブラリと呼ばれるプログラム中で再利用可能な部品が実行環境に含まれており、プログラムを書く人はこれを利用することで簡単にやりたいことを実現できる。 これらの特徴のため、実行時には実行環境が設置されていることが必要になる。 ジャバのダウンロードサイト java.com/ja/ は、この「ジャバの実行環境 (Java Runtime Environment; JRE)」を無料でダウンロードするために広く用いられている。 このサイトはジャバの所有者であるオラクル社により管理されている。

このジャバのダウンロードサイトのデザインは、断続的にアップデートされてきた。 デザインの要素として、近年では共通してあなたとJAVA, 今すぐダウンロードというスローガン、および無料Javaのダウンロードという行動を促すボタンが配置されている点が共通していた (図 1)。 中でも、このあなたとJAVA, 今すぐダウンロードというスローガンは、「あなた」と「JAVA」という二者の隔たりの描写や、「今すぐダウンロード」というわかりやすい解決策の提示など、近代の思想史からみても特異な存在として注目されていた。

Java.com 「ド」が改行されていたときのスクリーンショット
図 1: 「ド」が改行されていたときのスクリーンショット

しかし、中でも目を引いていたのは、最後の「ド」の部分の改行位置である。 当時の調査報告を読むと、これは必ずしも当局(オラクル社)の意図したものではなく、インストールされているフォントや閲覧に使用しているウェブブラウザなどの環境に依存して「ダウンロード」が一行で表示されているケースも報告されていた。 しかし、それでも、WindowsやmacOS, Linuxを含む多くの一般的な閲覧環境で「ダウンロー」と「ド」が別の行に表示されていたことは事実であり、当時のコミュニティーの受け止めとしても「ド」が別な行にあることを当然として議論を進めることがしばしばあった。

この状況が一変したのが2020 年 9 月のアップデートである。 この頃、ジャバのサイトが更新され、「ダウンロー」と「ド」が多くの環境で同じ行に表示されるようになった (図 2)。 これは当局(オラクル社)の明確な意思表示であり、ジャバコミュニティ全体に大きな感情的衝撃が走った。 一部のジャバ支持者は暴徒化するなど、先鋭化した抗議活動も見られたが、全体としての受け止めはせいぜい困惑という表現でまとめられるものであった。

Java.com 「ド」が「修正」されたあとのスクリーンショット
図 2: 「ド」が「修正」されたあとのスクリーンショット

この混乱を受けて、オラクル社のコミュニティーマネージャ「ジャバ仙人」により、この変更は大きな意図を持ったものではないこと、および従来から「ド」の改行位置については重視していなかったことの説明が行われ、自体は一旦の収束を見たのであった。

我々ジャバのコミュニティーとしては、スローガン部分の描画結果だけでなく、ボタンの位置やデザイン、文言についても今後監視を強めていく必要がある。 ジャバのサイトを運営しているのはオラクル社だが、一方的に責任を押し付けるだけでなく、コミュニティーはコミュニティーとしての役割を果たすことでジャバのサイトの運営に関わっている、そういった意識で行動することが重要ではないか。 オラクル社としても、ジャバのサイトのデザイン変更でのコミュニティーからのフィードバックは当然目を通しているわけであるから、我々としても意思表明は積極的に行っていく必要がある。

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2020-OCT-07.